第二十九話: とりあえず逃げましょう

 
相談事例から“今どきの消費者”

第二十九話: とりあえず逃げましょう

 相 談 内 容

 オークションでショップの1円から出品の商品を26個、1度に落札した。
商品は財布 ネックレス カールドライヤーなど。送料が2,000円とかかれており、一緒に送って欲しい旨、ショップに伝えたが、ショップからは「一緒に送りますけど、発送料は1商品ずつかかります」といわれた。商品代は744円で 送料が 2,000×26個と消費税で52744円になる。
 その後、商品が送られたら保留にする、と伝えたところ、「商品送ったら受け取れない、さしたらキャンセルやら、いじましいんじゃ、恥を知れ」など、26個全部の評価欄に書かれていた。確かに私のミスだが悲しかった。

 ただ、事業者の評価を見ると、同じようなトラブルが他にもあるらしく、今回の件をオークションサイトに報告したら、しばらくして「当該事業者のオークションを中止しました」とのメールが来た。確かにサイトも消されていた。

息子が財務関係の方にきいた話では、私の勘違いでも、商品に対して、べらぼうな送料はクリーニングオフ(原文ママ)が出来るとおっしゃっていたそうである。ただ主人も息子も、相手がこちらの住所や電話番号など知っているので、後でどんな嫌がらせをしてくるかわからないから、お金を払った方がいいのでは、といっている。

皆を喜ばしてあげようと欲張ったせいで、とんでもないことになってしまった。商品代を払えと言うことであれば支払うが、べらぼうな送料は何とかならないだろうか。自分に過失があることは十分承知しているが、商品はとりあえず受け取らずに保留にしてもらうことでよいだろうか。事業者は、私の住所から近いので、嫌がらせなどしてこないか凄く心配である。

 処 理 概 要

 出品側である相手方は事業者のようであったが、まず、クリーニングオフではなくクーリングオフ制度の趣旨と、通信販売に該当する場合は適用外であることを説明した。

 相談者のケースは、1円から開始されるオークションで落札された商品において、その商品ごとに2,000円の送料を請求されているという状況と見受けられた。その上で、当該オークションでは、商品価格は低額で落札されても、実費を超えた送料を取ることで、損のないように設定しているものと思われた。

ただ、逆に言えば、相談者の所在地に、一度に全ての落札した商品をひとつにして送るということが可能であれば、あえて送料を個々に落札した分、全てにおいて負担しなければならないといった合理的な理由があまり見当たらないという点もあるので、こちらであっせんにより解決を試みることを希望するかどうか、相談者に尋ねた。

 そうしたところ、相談者からメールがあり、あれからしばらく経っても事業者からは荷物は届かず、メールも無いとのことであった。サイトも消えてなくなったままとのこと。
そこで、しばらくはこのまま様子を見ていこうということにして、何かあれば再度連絡するように伝えた。

 解 説

 1円から開始するオークションは注目されやすいので、この手段を使って出品を行う事業者も多くいることだと思う。1円で開始しても、予め落札の最低価格のラインを設定することで、実際1円では落札できないように設定することもシステム上は可能だが、それでは落札されないまま終わってしまう可能性も高い。なので「送料」という名目で、実際は安く落札されても損の出ないように工夫が凝らしているのである。これは、オークションの本来の趣旨とは異なった出品方法である。

 ただ一方、趣旨はどうあれ「落札の場合2,000円の送料がかかる」と予めすべての出品説明に記載があるわけであるから、相談者も、このような出品物を安価で一時期に落札すれば、一度に送ってもらえて送料は安く済むはず、と勝手に思い込んで落札している点も、多少問題はあると思われる。そんな美味い話なんか、早々ないのである。

 従って、高くついた送料を一概に「払うな」とも「払え」とも言い切れず、ただ、相談者も反省しているようであり、また相手方事業者も一癖ありそうだったので、これはあっせんによる話し合いかと思われたが、運良く(?)オークション運営側によって、この事業者はオークション上から追い出されたためか、事業者がそれ以降、何も言ってこなくなった。入金もまだだったため、それをいいことに、今回はあえて逃げる戦法に出たのである。
 しかし、辛辣なオークション評価を、一度に26回分、受ける心情たるやいかに。ペナルティはこれで充分だろう。