第三十話: 騙されたと気がつくまで

 
相談事例から“今どきの消費者”

第三十話: 騙されたと気がつくまで

 相 談 内 容

1.
Aという出会い系サイトについての相談。
ケイタイの3キャリアやパソコンに対応しているという謳い文句だが、固有名詞や数字などが文字化けして内容が通じなくて困っている。
何人かの方に協力してもらい確認したのだが、同じ症状なのでプログラムの問題だと思われる。携帯の番号やメールアドレス、地名や日付、時間、名称が酷く、話にならない。
この3ヶ月ほどは、この化けの為に無駄にメールの交換を行っている状態で、有料でサービスを行っているにしては、お粗末な内容である。管理者に改善を要望していますが、取り合ってくれないどころか、退会を勧められる始末である。
こちらの要望は、普通にメールでき、待ち合わせの内容が送れるようになることである。

2.
Bという出会い系サイトを利用しているが、女性からのメールの受信・送信は有料になっている。サイト側は女性を装って、不特定多数の男性客に通信料を使わせようと思わせ振りなメールを送ってくる。これは詐欺だと思う。ただ、なりすましの女性とサイトが通謀しているかどうかがはっきりわからないので、こういう場合は払うしかないのだろうか。

クレジット払いの場合,提携している決済代行という海外にあるらしい会社が、ドル建てで決済をする様で、私はBに払った金額の1割増の額をクレジット会社から請求されているが、その説明はサイトのどこにも書いてない。クレジット会社は「兎に角、払え」の1点張りである。

3.
出会い系サイトCにて、サイト側が用意した出会えない人(サクラ)と携帯のメールを使い、クレジットで400万近いお金を使ってしまった。これまでの支払ったお金、及びこれから支払わなければならないお金は取り返すことが可能だろうか。

 処 理 概 要

1.
Aの提供するサービスに不具合があり、その件について改善を求めても、改善されない状況と言う相談だったが、サイトとの交渉に難航するようであれば、メールだけでなく書面などで主張を伝えるという方法があること、及びその方法を知らせた。

ただ、こういった出会い系サイトにおいては、メールアドレスや数字の羅列、特定の地名を排除する為のプログラムを導入しているケースは少なくなく、これによりユーザが「無駄なやり取り」をする度に、サイトはポイントによる料金を儲けることが出来るシステムになっており、ユーザに「無駄なやり取り」をさせるものサイトの目的であることを伝えた。

その上で、今後もサービス継続を希望して、今後サイトのシステム改善を求めていったとしても、このようなサイトからは誠意ある対応が期待できない可能性が極めて高いため、
それでも、当該サイトでのサービス継続を望むのかどうか、よく熟考するよう伝えた。

2.及び3.
この出会い系サイトは海外資本の決済代行会社と利用した、クレジットカード決済でポイントを購入し、利用するサイトと思われた。
また、ユーザがクレジットカード決済をする際、サイトは決済代行会社に一定の割合の手数料を支払う流れになっていることから、その決済代行会社に支払う手数料を、ユーザの利用料金に上乗せしているサイトが多い。

まず基本的に、購入したポイント分のサービスを不具合無く利用できたのであれば、サイト側は約束通りのサービスを提供していたと考えられるため、後から利用した分の返金を求めることは困難と思われることを伝えた。
しかし、サイト側がサクラを使っていることを知っていたら、当然このサイトのサービスを利用しないことと考えられるので、その場合は返金を求めることが可能かもしれないと伝えた。また、決済代行会社がサイトと加盟店契約をする際に、サクラ行為は当然禁止事項になっているはずなので、規約違反をしていることを決済代行会社に知らせて交渉する必要が出てくる。

ただ、その場合は相談者側で、本当にサイト上でサクラ行為があったのかどうかを立証することが必要となる。その場合、ポイント制のサイトは直接メールのやり取りをするのではなく、出会い系サイトのサーバを介してやり取りするため、そのやり取りの記録がユーザの手元に残りにくいシステムになっている。相談者側で、先ずはその記録を手元に残しているかどうかを確認し、残しているようであれば異議を決済代行会社に申し出るよう伝えた。

そして退会し、今後これ以上料金が発生しないようにすることも重要であると伝えた。

 解 説

 出会い系サイトの相談は、今も昔も変わらない相談のカテゴリである。もちろん、大方は騙された、と気がついてあわてて相談を寄せてくるものである。

ポイント制の有料出会い系サイトでは、メールや画像を送受信したりするたびに料金がかかる。多くはポイント制で、1ポイント10円単位で、大体1回のメール送受信に50円から100円前後かかるようになっている。画像の場合はもっと高額に設定されている。
ポイントの購入にはクレジットカード決済できるサイトが多く、こういったサービスのサイトはクレジットカード会社と直接の加盟店契約をできないので、間に決済代行会社が入ることがほとんどである。海外資本のところであれば、決済はドル建てで行われる。

 ポイント課金するため、ユーザはサイト上のサーバを介してのみ、やり取りできるシステムである。相手との直接のメールや電話でのやり取りは、サイト上でポイントを消化してもらえないのでご法度である。
そのため、個人情報やメールアドレス、地名や電話番号等一定の数字の羅列や、時間や曜日を表すものに関しては、文字化けするような、プロテクトするプログラムがサーバ上に組み込まれている。これは、サイト外での直接のやり取りをさせないためであるとともに、アトもう少し、という心理につけこんで、サイト上でポイントをたくさん消化させるためである。そのため、ユーザは数字を漢数字に置き換えたり、「A」を「えー」と置き換えたり、涙ぐましい努力をするのである。

 1.のケースは、相談者は「やめたい」とは一言も言っていない。何とか不具合なくこの出会い系サイトのサービスを継続したいらしい。でも、これはサイトがわざとこういったプロテクトをかけているものであるから、それを改善しろ、と言うのが無理な話である。これ以上無駄なお金を浪費する前に退会した方が身のためである。サイトも自らそう勧めているのであるから・・。

 2.と3.のケースは、サクラに騙された、という相談の典型例である。出会い系サイトでは、多かれ少なかれサクラ行為はあると思った方が良いと思っている。ただ、サクラ行為があったのかどうかを確実に立証することが難しいのである。
 上記処理結果で記載したが、ログインして出会い系サイトのサーバを利用してやり取りをするため、メールのようにその履歴が手元に残らない。サーバ上では、どんどん履歴が消去されていくので、イザ取り出そうとしても、既に消去されていて履歴が残っていないことが多い。

 女性から「お金を預けているので会って渡したい」とかいうメールが届いて本気にして会おうとするような人が、信じられないが未だにいる。会う場所や時間を決めるまでに大量のポイントを消化し、その上で、さらに「今どこ?」とか「やっぱり今日はいけない」とかの、たわいも無いやり取りにさらにポイントを使い、結局会えないのである。それを何回繰り返したら騙された、と気がつくのか、結構個人差がある。70万円ぐらいから100万円程度は結構当たり前で、3.のように400万円使わなければ分からない人もいるのである。なんとも複雑な思いが残る。