第三十二話: 1円出品トラブル

 
相談事例から“今どきの消費者”

第三十二話: 1円出品トラブル

 相 談 内 容

 オークションに送料落札者負担にて、シングルベッドを1円から出品した。結果11円で落札され、11円の入金がされたことを確認した。
 配送に別途、6,280円がかかるので、配送の手配後にこの配送料の金額を連絡し、相手方より「早々にありがとうございました」とメールで返信があった。
 その後、相手方から配送会社に対し、予定日の10日後に再配達の希望があった模様である。しかし配送会社より「当日届けにいってもおらず、音沙汰がない、あと3日しか預かれない」との連絡があった。

 相手方とはメールしか連絡方法が確認できていないため、早速相手方にメールで問い合わせを行い、至急荷物を受け取るよう伝えた。それとともに、以下の内容を伝えた。

『もし配送会社の保管期日を過ぎても受け取られない場合は、ベッドを破棄してもらいます。当方はすでに必要のないものですので。
また、お互い支払った分は権利破棄が望ましいかと思いますがどうでしょうか。この場合ですと、あなたさまは私に支払った11円の権利破棄。私は送料分の支払いとその他、配送会社から求められる分をあなたさまに請求しないということです。
逆に11円の返金を求められる場合は、当方も送料分は請求させて頂きます』

 しかし、やはり連絡がないと配送会社から報告があった。
 私としては送料(場合により返送料or破棄代金まで)を負担しなければいけないという納得できない状態であるため、このケースでアドバイスが欲しい。

 処 理 概 要

 相談内容からは、相手方が商品を受け取れない事情がわからなかったが、既に商品代金を受け取り相手方に商品が引き渡されていない、取引が不完全な状態と考えられた。

 ただ、いくら11円とはいえ、相手方が既にその商品代金を支払っているため、相手方の合意なくして勝手に商品を破棄することはトラブルの元であり、もし今後相手方が最終的に商品を受け取らなかった場合は、相談者が一旦商品を引き取り、相手方に商品代金を返還した上で、送料等かかった諸費用を改めて相手方に請求する流れになろうと思われた。

 元々、相手方の電話番号を聞いていないのか、それとも連絡不能な番号を知らされていたのかはわからなかったが、どちらにしても宅配業者の対応を見る限り、知らされている住所に相手方は存在するようだったので、相手方と連絡が取れない場合は、配達記録や簡易書留郵便を利用し、書面にて連絡を取ってみるよう伝えた。

 その際、返送されてきた商品を預かっているから約束どおり送料負担にて引き取ること、受け取らないようであれば契約を解除し代金をいつでも返還する用意があること、その際の諸費用の請求に関して等、必要事項を記載しておき、また、オークションの掲示板や評価欄に至急連絡をくれるよう記載して様子を見るよう伝えた。

 解 説

 相談者としては、11円で不要となったベッドを処分しようと思ってとんだ目にあった、という心情なのだと思う。落札代金とともに、どうして先に送料も併せて貰わなかったのだろうか、少し疑問に残る。

 さて、個人が行う1円出品の商品には結構大型商品が多い。今回のケースのように、大型家具などを自宅での処分に困って、送料負担してくれるならタダ同然で人にあげてしまおう、と考えることが多いからなのだと思う。それ自体はリサイクルやものの有効利用の観点からして、オークションの大きなメリットでもあるのだが、そこでトラブルが発生すると、商品代金がタダ同然(でもタダではない!)であるだけに、それはそれで面倒なことになる。

 以前、トレーニングマシーンを1円で落札し、トラブルになりあっせんしたケースがあった。これは、落札代金1円と送料(約3,000円)を支払い、届いたマシーンはネジがひとつ足りなくて、そのネジが無いと安全に機能しない、という状態だった。
 落札者は当初返品を希望したが、出品者は1円の代金なら振込み手数料負担で返金しても良いが、返品に応じるなら返送料を負担するよう主張した。当然落札者は納得しない。 
 もし、そのとき「1円を返金してもらって返送もしない」という、今回の相談者の主張にあるような方法を取ったとしても、その使えない大型のトレーニングマシーンは、家にあっても場所をとり邪魔であるし処分するにもお金がかかる、二進も三進も行かない状態になるのである。
 それならトレーニングマシーンが安全に使用できるようにするために、同じようなネジを落札者が購入してその代金を出品者が負担するか、それとも出品者がネジを購入し落札者に届けるか、どちらかの方法が取れないか検討したところ、最終的には出品者が購入して落札者に送る、ということになったのである。ネジ代金は約200円前後であった。
 結局、途中、何度か出品者の出張等が入った関係で、ここまで話がまとまるまでに数ヶ月を要した。

 このように1円オークショントラブルは、被害救済額、及び費用対効果の極めて低いトラブルなのである。本音を言うと、あまりこの類のトラブルを起こして欲しくない・・。