第三十五話: 相談では見えないところで

 
相談事例から“今どきの消費者”

第三十五話: 相談では見えないところで

 相 談 内 容

 オークションにてピンクのスプリングコートを6,400円で落札。
 商品があまりにも汚れていて、クリーニング店にて相談したが、シミ汚れが長時間経過しているので取れない、とのことだった。このような汚れがあることの説明はなかったので返品交渉をしたが、質問がなかった等、口論になり、こちらは処分にも困るので、最終的には、返金はしなくて良いので商品を引き取って欲しい、と交渉した。
 しかし出品者はその間に引越しをしたようで、新しい住所は教えてもらえない。

 出品者の評価欄を見てみたのだが、これまでにもかなり汚れた汚い商品のやり取り等があり、悪い評価が多い方だったので、「ご自分の評価を謙虚に受け止めマナーや常識を持ったオークションをして頂きたい」というような内容のメールを送ったところ、「これは料金の話ではなく誹謗、中傷、恐喝という行為だ、そこまで中傷されるなら専門家にお願いして弁護士を通して話す」とのことだったので「こちらが被害者だし、あれほど汚い商品を送ってきて大変憤慨しているし、料金の返金もいらないけれど評価欄には書くというメールを送ったまでであり、何が恐喝になるのか、中傷でも無く、こちらの率直な意見を述べただけなので、誹謗、中傷と取られるようでしたら、弁護士の方にでもご自由に相談して下さい」と返事した。

 変に感情のこじれか、ごねられているのかよく分からないが、早く返品して早期解決を望んでいる。

 処 理 概 要

 先ず相談者には、今回、汚れに関する記述が無かったにもかかわらず、その説明にない汚れが原因で、結果、商品が使用に耐えないものであれば、返品・返金等の主張は可能と伝えた。

 しかし、今回の件に関して相談者は、既に『返金はしなくて良いので商品を引き取って欲しい』という考え方の上、出品者に関しては『その間に引越しをされたようで、新しい住所は教えて頂けません』とのことだったので、特に相談者に返金の要求が無いようであれば、住所も分からない出品者に対し、さらに返送料負担の問題も新たに発生する可能性もあり、そこまでして、わざわざ出品者に商品を返送する合理的理由も見当たらないと伝えた。
 そして気持ちは分かるが、商品は自ら処分し、報復評価の覚悟があれば、出品者にはしかるべき評価を残し、これ以上不必要なやり取りを避け、早々に忘れるほうが精神衛生上良いのではないか、と伝えた。

 その後、その出品者と名乗る人からこちらに直接メールがあった。
 その出品者が言うには、確かにオークションには「USED」といった記載のみで、詳しいコメントを残さず出品したが、それは悪意があってのことではなく、出品に時間がかけられないので「画像からの判断と、ご購入意思のある方からは質問をいただきます」として、特に美品などという記載もしていなかったとのことだった。
 また、新しい住所に関しては、相談者に「納得したらお送りします」と告げてあり、それに相談者は、もうすでに「返送した」と言っており、しかし、新しい住所には、未だその返送したというものは転送されてきていない、ということだった。
 また、こちらが相談者に回答した回答内容も知りえているようであった。

 翌日、さらに出品者よりメールがあり、相談者から一晩で70通ものメールが届いている、ということだった。これが「とても返金はいらないから引き取って欲しい」と主張する人のやることか、また、さらに、オークションの質問欄にも入れてくるとのことで、この嫌がらせをどうしたらよいのか、という質問だった。

 ただ、この出品者からは、特に自分の個人情報を知らせないまま、直接こちらにメールが届いていたため、それだけでは今回の当事者であるという特定が出来なかった。(現在、こちらで相談を受け付ける際に相手方が個人の場合は、その個人情報を極力取らないようにしているため)
 そこでこの出品者には、再度こちらの相談フォームより必要事項を入力して、出品者からも相談を送るよう伝えたが、その後どちらからも連絡はなかった。

 解 説

 オークションの個人間、及び小規模事業者との取引は、返品等のトラブルが発生すると特に感情論に発展しやすく、さらに取引金額が少ないと解決が遠のく。
 このケースでは、相談者は、もう返金は望まないとのことだったが、それでもわざわざこのように手間をかけて出品者に商品を返送しようと考える人もいる。先ず、手元においておきたくない、という理由、それなら捨てればよいのだが、おとなしく捨てるだけでは出品者に得させたようで気分的に満足しないので、自分の腹立たしい気持ちを最後に相手にアピールしておきたい、という考えもあるのかもしれない。

 このような相談を受けた場合、こちらでは、逆に第三者の立場として「そんなことをしても意味はないし、かえってトラブルを大きくして、もっといやな思いをする可能性もあり、早く忘れたほうが自分のため」と伝えるようにしている。相談者の腹立たしい気持ちも理解しつつ、客観的に、また冷静に、意味のないことをしても何も得にはならないことを伝えるのも、第三者として必要とされている役割だと思う。

 だからといって、なかなか1日2日で忘れろというのも無理な話なのだが、この相談者も感情が収まらず、出品者に、一晩に70通もの嫌がらせメールを送ってしまっていたようである。
 さらに、こちらからの回答内容も出品者に知らせているようであったが、実は、こちらからの回答は全てメールで行われるため、相談用のページと、回答メール文末に毎回、「回答内容の二次利用や転載はしないよう」記載しているのである。これは、メールによる回答が文章で残るため、回答だけが一人歩きしやすく、また改ざんの恐れがあるからである。
 ほとんどの相談者は、その趣旨を理解し守ってもらえるのだが、中にはトラブル相手にそのままコピペで伝えてしまうケースもある。こればかりは物理的に止められないので、ある程度は仕方がないと覚悟している。