第三十六話: 電話は避けたい

 
相談事例から“今どきの消費者”

第三十六話: 電話は避けたい

 相 談 内 容

 平成19年2月、レコードの買い取りサイトで見つけ、「着払い・連絡不要」とのことで、LPレコード17枚を宅配便で送った。翌日、配達(受け取り)確認済みである。
 その後、事業者から連絡がないため、3月にハガキで催促した。それでも連絡がないので、さらに翌月に催促状を配達記録で送った。同時に消費生活センターにも同じ内容のものを送った。

 しかし事業者宛の郵便物は郵便局から戻りの知らせあり。本日窓口で確認したところ、その会社は、その住所に存在するが受取人が不在で、保管期間が過ぎたので差出人に戻したとのこと。また消費生活センターから連絡があり、価格も交渉しない、会社のことも調べない、レコードのリストもない状態なのでどうしようもないとのことだった。
 こんな業者がはびこることが許せない。

 処 理 概 要

 相談者より指示された、事業者のサイトを確認したところ、確かに中古レコードを取り扱っている事業者であったが、トップに下記記載があった。

 『発送されましても当店では買取致しかねます。
 当店到着商品は着払い送料はお支払いいたしますが、無料引取りとなります。御了承ください。
 請求されましても一切お支払いの義務は追いません。
 至 平成18年12月〜』

 相談者の今回の相談内容を見ると、この事業者に対してレコードの「買取」を希望しているように見受けられたが、この相談者がレコードを事業者に送付した日付(平成19年2月)を確認すると、それは既に上記の買取中止後のことであった。

 そこで相談者には、当該事業者とは、具体的にどのような「買取」についての合意が商品送付前にされていたのか、宅配便にて商品送付までの、取引の経緯をこちらに知らせるよう伝えた。
 それとともに、事業者とは電話連絡が可能なのかどうか、また、相談者が、今後どうしたいのかの希望が分からなかったため、希望する解決内容を知らせるよう伝えた。

 相談者から返信があり、相談者が手元に保管している記録では、上記『買取しない』旨の記載は無く、単に『住所・会社名・電話番号があり「送料着払いにて発送していただければ幸いです。事前の連絡は必要ありません」』で終わっているとのことであった。
 買取金額などについては、事前に事業者と約束したという経緯はなく、『事前の連絡は必要ありません』ということもあり、なんら連絡をとっていないとのことであった。また、今まで一度も電話連絡はしていないとのことであった。
 そして、事業者に対する希望としては『催促に対して真摯に答えていただきたい、金額の問題ではないが、催促に要した切手代ぐらいはいただきたい』とのことであった。

 そこで、これら内容を見た限りにおいて、今回の取引では、先ず相談者が事業者の「買取」の広告を見て、事前連絡せずにそのままレコードを先送りし、その後事業者が査定の上、買取価格を決めるという流れだったにも関わらず、催促してもいまだ事業者からは何も返答が無い状態、と思われた。

 そこで、相談者が事業者と取引した時点では、現在サイト上にある『買取致しかねる』旨の記載が無く、相談者が申込み時に「買取する」と広告していたのであれば、当時の広告内容通り、送った商品を、先ずは見積もり、買取するよう主張することは可能と思われた。
 ただ、催促に関しては、事業者側が書面を受け取らないようであれば、直接電話してみるよう伝えた。もし、電話しても通じない、若しくは無視するようであれば、郵便局の話にあるように、その住所に事業者が存在するようであれば、直接現地に出向いてみることも一考であると伝えた。(相談者の住所が、事業者の住所の隣県だったため)
 ただ、真摯な回答を得ることに関しては、誠意ある事業者でなければ真摯な回答は期待できないため、先ずは電話が通じるようであれば直接話をしてみて、感触を確かめてみてはどうかと考えた。

 そうしたところ相談者から、直接電話はしたくないので、相談は取り下げるとの返信があった。

 解 説

 良く相談では、事業者と電話による連絡が取れない、取りにくい、メールのみで電話で応対してくれない、といった話を聞く。メールでサポートと上手くいかない場合は、書面による他、多くは双方向でコミュニケーションが取れる電話対応を検討する。(海外は別として)

 この相談のケースでは、事業者に買取希望のレコードを送付するとき「事前連絡不要」だからとして、そのまま荷物を送り、その後事業者から連絡が無いとして、書面により2度の催促、2回目に書面が戻ってきたので、消費生活センターの紹介によりこちらに相談があったものだが、良く考えると消費生活センターへの相談も書面で行っている。
 この相談者は、電話連絡が来ることは拒まなくでも、自ら電話連絡することは、なぜか避けているようであった。

 電話は目的を伝えるほかに、電話口の声のトーンや間合いを見ながら、その相手の状況や気持ちを察し、それに合わせて言葉を選びながら双方向のコミュニケーションを取るツールである。メールが当たり前になりつつある社会で、それが煩わしい、と思う人は当然いることだろう。
 ただ、トラブルが発生した場合は、解決のために電話が必要であれば、電話することも必要である。自分の意思を書面やメールで一方的に伝えて、その回答を気長に待っていても、相手に、それにきちんと答えてくれるだけの誠意があるとは限らない。

 さて、相談現場でも、ちょっと“問題あり”の相談者に多いケースだが、自分からの電話連絡はまめにするものの、決して自分の電話番号は知らせず、こちらからの電話連絡を受けることを極端に避けたがる傾向の人が時々いる。
 このケースは逆だったが、もちろん取引の内容にもよるのだろうが、このように、催促の書面はきちんと送ることが出来ても、事業者に電話するぐらいなら解決しなくても良い、という考えを持つ人もいるということである。