第三十七話: オークションに向かない人

 
相談事例から“今どきの消費者”

第三十七話: オークションに向かない人

 相 談 内 容

※ 全て同一人物からの相談

(1)
 オークションでMD・CDコンポを2,000円で購入したが、MDもCDも動かず、スピーカーに接続するためのコードもない。
 メーカーでの修繕には2万円弱するので、これでは何のために購入したのか分からない。

(2)
 ぶらさがり健康器を3,000円にてオークションで落札、期限が過ぎて6時間たち、何の返事もなかったので、落札できなかったものと思った。そこで改めて別のオークションに参加して落札した。ところがその後、最初の落札の結果がきたので、同じ商品を2度オークションで落札した結果となってしまった。
 私は、1つは購入し、もう1つはキャンセルとしたら、結果、私の評価が非常に悪いとなってしまった。先方にはその旨連絡したが、何の返事もない。悪い評価は訂正できないのだろうか。

(3)
 出品者は事業者。自転車を落札したが、3色のうち希望の色が欠品とのことだった。
 自宅から近いので取にいきたい、と伝えると「不可能」とのことで、送料を2,000円更に負担して欲しい、とことだった。これは先に案内がなかったのでキャンセルすると、個人あてに罵倒のメールが届いた。

 処 理 概 要

(1)
 当初、オークションサイトの提示がなかったので、再度こちらで確認すると、当時のオークション説明には、下記商品説明があった。

 中古品 画像現状
 出品は画像にある物が全てです。

 CD オープンクローズOK CD回転しません。
 MD 再生確認しています。
 ラジオ 受信確認しています。

 パーツの有無、詳しい動作等一切確認しておりませんので
 完全ジャンクとして出品します。

 その上で、既に終了したオークションであったので、オークションに使用されていた画像は確認でなかったが、もし、当時の画像にコードが写っていなければ、上記説明より、基本的にはそのコードは付属していないものと考えられた。
 また動作確認していないことのほか、商品は完全ジャンクであること、ノークレームノーリターンの旨記載があり、この内容を見る限り、この出品への入札は、基本的には、当該商品が動作しないことを承知の上と思われた。

 もし、説明にない不具合があった場合は、返品や修理費用の負担を相手方に求めることは可能と考えられるが、この相談内容とオークションサイトの説明を見る限り、事前の説明にある不具合部分については、それら対応を強く出品者に求めることは困難と思われることを伝えた。

(2)
 評価に関する相談と見られたが、基本的には、オークション上では取引相手に対する評価は、取引相手に任されており、さらに落札者側の都合によるキャンセルとされた場合はオークション運営側からも悪い評価を受けるシステムであると考えられた。

 キャンセルの場合、出品者、及び落札者、どちらの都合によりキャンセルとなるかは、当該オークション上では、出品者側が判断して手続きする流れになっていること、評価の削除は基本的には不可能であること、また評価はあくまで取引相手の判断となることから、その評価の変更を相手方に強硬に求めることは、現実問題として難しいということ、ただ、もし不当な評価を入れられていた場合は、評価欄には、自らの返答やコメントを書き込むことが可能なので、そこに返答やコメントを自ら記載することにより、その評価を見る第三者に対応が可能であると伝えた。

(3)
 この件においては、取引や経緯の確認はできなかったが、オークションにおいては、送料は出品者、及び落札者のどちらが負担するか、予めオークション画面に指定がされているのが一般的であり、また、商品の具体的送付方法についても、例えば宅配便等、オークション画面に予め記載があるようであれば、落札後、例えば「直接取りに行く」といった、商品入手手段の変更を希望する場合は、基本的には双方話し合いをし、その合意をもって行われることと考えられた。
 しかも、もし当該商品が「事業者」の出品であれば、商品代金以外にかかる送料などがある場合は、特定商取引法上、予め、代金以外にかかる費用の具体的金額を、オークション上に記載しておく必要があると考えられることを伝えた。

 しかし、既に取引においてはキャンセルが成立しており、代金未払いとのことなので、先ずは今後、この事業者から届くメールには特に反応せず、そのまま様子をみるよう伝えた。

 解 説

 この相談者は、オークションにほぼ初めて参加している状態の、いわばオークション初心者であったが、取引履歴を見るといずれもマイナス評価が付けられていた。さらにこれらケースのほかにも落札記録があり、それも落札者都合によるキャンセルしているためマイナス評価が付けられており、評価欄にほとんどプラスの評価が無いような状態であった。

 ただ、(1)(2)のケースは、残念ながら相談者側にも問題があると思われ、(3)はたまたま当たった相手が悪かった、という具合に、いずれも解決の糸口が見つけられない状況で、相談者には非常に気の毒だが、とりあえず今後オークションはやめた方が良いとしか言いようが無い。

 オークションではどうしても中古品の個人間取引が多いので、商品瑕疵に関するトラブルや、それに伴う感情的ないさかいが無くなることはない。そういったトラブルを本当にたくさん見てきたが、それでもオークション取引全体を見れば、ほとんどの取引はマナーある人たちにより正常に行われている。自己責任のもとに多少のことは目をつぶることができし、出品者側もそれなりに対応ができる。

 もちろん「多少のこと」を超えるケースは別であるが、そのようなケースはそうそう発生しない。オークションの相談を受けてきて感じるのは、トラブルを抱えて相談に来るオークションユーザにほとんど初心者がいないことである。みな、それなりの数の評価を持ち、普通にこれまで取引を繰り返してきているのだが、ある時、偶然にトラブルに巻き込まれてしまうのである。
 ただ、中には最初からオークションに向かないような人もいるので、場が荒れない工夫もなんとなく必要なのだと思う。