第三十九話: 逆に訴えられる?

 
相談事例から“今どきの消費者”

第三十九話: 逆に訴えられる?

 相 談 内 容

 イベント事務局のブログサイトで、ある映画の出演者を招いてサイン会を行うと告知を行っており、自分はそのイベントへの参加申し込みを行い、その後、参加費用の合計金額12,000円を指定された銀行口座に振り込んだ。振込先は個人口座だった。

 その後入金確認のメールをもらったが、サイン会の開催予定が突如中止になり、次回開催予定も全くたたないという状況に陥った。納得出来る説明もないまま、その後数ヶ月に渡り何の連絡も無く、これはもう無理だと判断して、前金で入金した代金の返還を求めるメールを送った。
 そのメールへの回答はなかったのだが、今月に入り「返金希望の方には今月の9日〜16日の間に返金致します」との告知がHP上に上がり、それを信じて16日まで待ったのだが、メールでの連絡も入金も一切無かった。

 期日の16日になり、返金予定が20日になりますとの告知が再びあり、本日21日まで待ってみたがやはり何の連絡も入金も一切ない。

 処 理 概 要

  確認する限り、サイト上には事業者の所在地も連絡先も一切記載されていなかった。
ただ、このケースのように、返金の約束をしてからも返金がされず、連絡先を全く知らせないまま連絡不能になるケースでは、事業者にはもう返金する意志が無いか、もしくは返金する資金が無いという可能性が考えられた。

 相談者においても所在地が分からず、分かるのは振込先の銀行口座のみということだったので、その金融機関に連絡して事情を説明して、口座名義人の所在地を尋ねたり、口座名義人に連絡を取る方法について相談し、場合によっては当該口座の凍結についても可能かどうかを相談してみるよう伝えた。
 また、ブログを提供しているプロバイダに対しても一連の経緯を情報提供し、事業者に連絡が取れないかどうか相談してみるよう伝えた。

 そこで、相談者はこちらからのアドバイスに従い、先ず振込先の銀行に連絡を取ったが、「一個人に相手の方と連絡先をお教えする事は出来ませんし、仲介する事も出来ません」と断られたということだった。
 また、相談者は、併せて事業者がブログを借り受けているプロバイダにも連絡をして、今までの経緯を話して、事業者から自分に連絡をするようお願いしたということだった。

 数日後にプロバイダから相談者に連絡があり、「現在この件について確認中です」との連絡が入ったということで、その後この事業者のブログは閉鎖された。
 そして、そのすぐ後に、相談者のところに事業者代表からメールが届き、無事に返金が行われたということだった。

 しかし、さらにその後、相談者のところに事業者代表からメールが届き、相談者が金融機関に対して相談した事で自分達は銀行から信用を失ったとの事と、ブログのプロバイダによってブログを閉鎖された事で甚大な被害が発生しているので、「今後法的な問題になった場合、弁護士を通じて連絡致します」といった内容のメールが届いたということだった。

 どうも相談者が金融機関に問い合わせたときは、「こちらでは何も出来ません」的な回答であったのだが、そう言いながらも、金融機関は口座名義人に対して、なんらかの確認作業が行われていたようであった。
 プロバイダに関しては、相談者からの連絡で、独自に事業者のブログを調査した結果、なんらかの問題点が確認されての閉鎖処置であったものと思われたが、この処置に対して、プロバイダから相談者には特に何も連絡は無かったとのことだった。ただ「該当ページのログは保存しましたので、警察に通報される際にはお伝えください」との返事はもらっているとのことであった。

 相談者は、『金融機関に連絡をとったのも、事業者が連絡先を一切公表してくれないことや、約束を反故にして代金を返還しないこと、こちらからの連絡を全て無視されてきた結果であり、プロバイダに対しても、今までの経緯の話はしたが、あくまでお願いしたのは事業者との連絡であり、プロバイダの判断でブログを閉鎖までしたものである』とのことで、これにより事業者になんらかの損害を蒙った場合、これが自分の責任になってしまうのだろうか、ということだった。
 そこで相談者からは、もし弁護士が出てくるのであれば、その弁護士に関する情報と、事業者側も代表の氏名と現在使用している電話番号と現住所を知らせるようメールを出し、現在回答待ちとのことであったが、どうもまともな返事がもらえる可能性は低いようであった。

 ただ、相談者からの経緯を聞く限り、事業者がそれで訴訟等を行う可能性はきわめて低いと考えられたため、返金がなされているのであれば、先ずは様子をみて、何か動きがあれば、すぐにこちらに連絡をするよう伝えた。

 解 説

  返金の約束が守られず、また事業者の所在地も分からないということで、わずかな手がかりを求めて振込先の口座金融機関とサービスプロバイダに相談したところ、それら機関が“思いのほか動いてくれてしまった”ため、それを“逆恨み”したサイトから思わぬ反撃を受けてしまった、といったところであろうか。
 サービスプロバイダがサイトをいきなり閉鎖したこともさることながら、警察の協力もないまま、金融機関が裏で動いていたことは以外であった。ただ、これら機関には、もしかしたらこの相談者のほかにも、複数同じ被害報告が寄せられていたのかも知れない。

 ただ、相談者に対しては、これら機関に相談するよう助言したのはこちらであり、その結果、相談者に不利なことがあってはならないので、もし相談者に今後動きがあれば、何かしらフォローをするつもりだったが、今のところサイトの動きはないようである。
 相談機関では、相談に対してアドバイスする内容には、きちんと責任を持たないといけないということを、改めて認識した次第である。