第四十三話: 縁は切りたい、されど言いなりは悔しい

 
相談事例から“今どきの消費者”

第四十三話: 縁は切りたい、されど言いなりは悔しい

 相 談 内 容

 ネットオークションで、ニンテンドウDSライトを17,700円で落札。翌日に指定先の銀行口座に入金した。
 入金後、オークション事務局から「相手の方の出品はトラブルの可能性が高いためこちらでキャンセル処理しました。振り込みはおやめください」とのメールに気付いた。
 オークション事務局から出品者の振り込み先と電話番号の情報を貰っていたので、出品者へ電話をかけたところまったく違う人が電話に出た。そのため、翌日振込みをした銀行から組戻し請求を出し、サイトで用意されているメール送受信の画面から組戻し請求に応えてもらえるようにメールを送信した。

 当日、出品者からサイトで用意しているメールにて連絡があったため、事務局からキャンセルされているため組戻し請求に応えてもらえるよう再度連絡したが、商品を送付するか、キャンセルを要求された。キャンセルの場合は、キャンセル料として支払金額の50%と無駄になった梱包料として1,000円を要求された。

 このあといろいろと商品を送るかキャンセルするかでメールのやり取りをし、結果こちらからは「組戻し請求に応えるか商品を発送するかをしてください。商品が手元に届き、届いたときに料金が発生していない場合には組戻し請求を取り消します」と要求した。
 これに対して出品者は「組戻し請求には応じない。組戻し請求が取り消されるまで商品は発送しない。これに応じない場合はキャンセルの場合は50%のキャンセル料+1,000円を請求。いずれにも同意してもらえない場合は法的処置を取らざるを得ない」といってきた。

 そこで質問だが、こちらとしては、とにかくこの状況を早く終わらせたい。お金は返ってこなくても良いとして、こちらから今後メールのやり取りをしなかった場合、法的処置を出品者がする可能性があり、この場合こちらに非がある事になるのだろうか。
 また、相手とメールのやり取りを今後しなかった場合、わたしは相手とのやり取りを絶ちたいわけであるから、組戻し請求をとりけそうと考えているが、出品者に「やはり落札者に非があった」と思われるのが悔しく、出品者のやり方があっていたと思われることが悲しく思うので、今後どのような対応をして行くのが一番良いのか迷っている。

 処 理 概 要

 もし今後、この取引を継続する意思があれば、さらに商品を引き渡さなければ組み戻し請求を取り下げない、と相手方に主張することも可能とは考えられるが、先ず、今回のオークション事務局の対応を考えると、取引の継続は望ましいものとはいえないと思われること、従って今後相手方へは、代金返還を考えたほうが賢明ではないか、と伝えた。

 そこで相手方は
「組戻し請求には応じない。組戻し請求が取り消されるまで商品は発送しない。これに応じない場合はキャンセルの場合は50%のキャンセル料+1,000円を請求。いずれにも同意してもらえない場合は法的処置を取らざるを得ない」
 との主張だったが、そもそもこの事前に合意のないキャンセル料は高額であり、その合理的理由も見当たらない上に、オークション事務局においてオークション取引は既にキャンセル処理されており、その原因は少なくとも相談者の責任ではないと思われた。
 そのため、今回の相手方からのこれらキャンセル料の請求に、相談者が応じる必要は無いものと思われた。

 そして、これまでの経緯を鑑みても、仮に相談者が組み戻し請求を取り下げなかったり、メールのやり取りを行わなかったとしても、それにより相手方が本当に法的措置をとるかどうかは極めて疑問であり、仮にメールに返答をしなかったとしても、相談者がそれで不利になることもあまり考えられないと思われた。

 そして、今回の件を早く終わらせたい、しかし一方、相手方の主張を認めた形での終了が悔しい、という気持ちは良く分かるが、少し時間をかけて自分の気持ちを整理して、最終的に、これら内容から、どの対応方法が自分にとって一番良いか、判断するよう伝えた。

 解 説

 組戻し請求とは、銀行振込みの際、例えば金額や振込み先を間違えたときに、振込み元の金融機関から振込先の金融機関に組戻し請求をかけて、振込み前の状態に戻すことである。振り込んですぐの対応であれば取り戻せる可能性も高いが、振込みから時間が経ったり振込先が振り込み金を受取ってしまうと出来なくなるようである。

 今回は、代金振込み後、相談者がオークション事務局からのキャンセル手続きと振り込み停止連絡を受けて、すぐ組戻し請求をかけたものだが、その相手方が組戻し請求に応じず、逆に組戻し請求を取り下げるかキャンセル料を支払うよう請求されたということである。
 その結果、相談者はどのように対応してよいか分からず、代金をあきらめることは受け入れられても、相手方の一連の主張を認めるような行動はしたくはないという葛藤が発生することになる。代金ではなく気持ちの問題である。こういった場合、すぐに「こうしよう」という回答が出にくく、本人が最終的にどう行動すれば一番満足が得られるかを判断するには、ある程度の時間を要するものと思う。

 ただ、今回の件は、元はオークション事務局が相談者に対し、代金を振り込まないよう連絡し、取引を強制的にキャンセル手続きしてしまったことにもよる。そうであれば、オークション事務局からも相手方に対し、組戻しに応じるよう働きかけるなど、もう少し協力をお願いしたいところである。