第四十五話: 深入りは禁物

 
相談事例から“今どきの消費者”

第四十五話: 深入りは禁物

 相 談 内 容

 保証人を紹介してくれるサイトで、『退職時の保証人代行2万円』と書かれていたので、相談メールを送った直後、サイトの担当者より電話が来て「相談内容の件、2万円でお引き受け致します」と約束したので、銀行から2万円振り込んだ。
 しかし、その後一向に連絡がなく、こちらから電話したところ「当初聞いていた話と違う。そういった内容なら30万円必要だ」といわれた。

 そこで、他に相談したところ「それでもし30万円振り込んだら、今度は100万円よこせといわれるかもしれないからやめた方がいい。30万円は5年経ったら返すと言っているそうだがそんな約束はまるで当てにならない」とアドバイスを受けた事もあり、依頼のキャンセルと、始めに振り込んだ2万円の返金を要求したのだが、返金はできない、の一点張り。今回は2万円の被害ですんだが、もし言われるままに30万円振り込んでいたらと思うとぞっとする。この件で泣き寝入りしたくない。

 処 理 概 要

  当該サイトは、就職やアパート等の賃貸借契約、また融資申込みなどで身元保証人が必要な場合に、その保証人を紹介するサービスであり、サービスを受けるには登録が必要となる。ただ、登録すると他のユーザの保証人にもなるというシステムであった。つまり登録ユーザ同士が相互に保証人になりあうのである。

 相談者に、取引の詳細と、今までのサイトとのやり取りを知らせるよう伝えた。相談者より以下の経緯、及びやり取りについて連絡があった。

 先ず、相談者がサイトを見て、業者にメールを出す。
 『新着コーナーで 退職が21000円といううれしい追加項目が。ただし、私の場合、保証人になっていただく際「○○(相談者の名前)がご迷惑をかけ申し訳ありませんでした。今後会社に迷惑をかけることはありません」って離職証発行してもらう際、保証人の方に一筆もらう必要があるのですが、可能しょうか。また、保証人代行業者とばれない様な配慮なのでしょうか?(保証人の欄に、保証人代行業者××とか、かかれないか心配です)料金見積もりよろしくお願いします』

 その後、業者よりメール。
 『時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。この度は、弊社のサービスにご質問いただき、誠に有難う御座います。
 さてメールのほうを拝見させていただきました。弊社のほうでも、以前より退職の際の保証人様のお問い合わせを多数いただいており今回新たに、加えさせていただきました。
 記入の際も、保証人様に直接ご記入・ご捺印していただいておりますので保証人代行業者に依頼されたというのも判りませんので問題はないかと思います。
 また退職される会社のほうから、確認のご連絡が有った際も事前に弊社より保証人様に連絡しておりますので、問題はございません。
 お申込後書類のご返送迄、早急に対応させていただきますのでご検討していただけますよう、宜しくお願い申し上げます』

 この直後 業者からなんとかの入会書とかいっぱい入っている書類が届く。免許書とか戸籍とか揃えるよう指示書があった(それはホームページにも書いてある)
 この時点で業者のホームページには 保証人同士で助け合う。もしなにかトラブルになっても被害は全て法律で業者が負担するから大丈夫(といったうたい文句が書かれていたが、今はその箇所が消えている)。

 その後もいろいろな便利屋に同文メール出したが、7万円という業者が多い中、この業者が一番安かったので、ここに詳しい相談メールを出した。

 『おねがいしたいんですけど、システムがよくわからなくて・・・・保証人になってもらう代わりに、保証人がいなくて困ってる人が近くにいたら、今度は自分が他の人を助けてあげるシステム(^−^;?まぁ、危なくなければ、かまわないけど。

 ・とりあえず 抑えておきたいところ
 私 ○○ 30歳 株式会社** S市病院設備員として勤務。病院設備員を辞めたくて、専門学校を受けようとした所、学校で健康診断書がいるということで、病院のハンコも身近にあるし、会社で健康診断したばかりなので自分で健康診断書つくって学校に出したらばれちゃって、会社から解雇(自主退社扱い)なりました。

 ・会社からの要求 (これがないと離職票発行してもらえず困ってます)
 本人の謝罪文、保証人(親)の謝罪と念書。

 しかし、うちの親は公安相手に「町を歩いてたら注射器で毒血をいれられた」とか叫ぶタイプなんで、なるべく親には出てきてほしくないので、会社には私から「保証人直筆による謝罪並びに念書の提出とありますが、今回の事の顛末を親戚に相談したところ、それだけ深く反省しているのであれば、保証人となって一筆書いても良いという返事を頂きました」と、親戚という形で保証人の説明をしてあります。

 ・そちらに直筆で書いてほしい文書

株式会社 **                        
平成  O年 O月 O日
取締役人事部長 **殿
謝罪ならびに念書

 今般、貴殿ご指摘による○○の不祥事につきまして、御社および相手先企業様へ多大なるご迷惑をおかけした事、本人も充分に反省し、且つ身元保証人といたしまして茲に深く謝罪いたします。
今後、本件に関わる件に於いて、御社及び相手先企業様へ一切ご迷惑をおかけしない旨、併せて茲にご確認させていただきます。
 身元保証人 OOOO  印

 これがホントに2万円でやってもらえるなら、とっても助かるのですがよろしいでしょうか?とりあえず、システムとかよくわからなかったんで、深く相談してみました』

 メールを送った直後、業者担当という方から電話が来る。
 「相談内容の件、2万円でお引き受け致します。2万円でお宅様が必要としていらっしゃる保証人による直筆の念書を作成させて頂きます。まずは先日送らせていただいた書類の必要事項を全て記入いただき、2万円をお振り込みください」

 というので代金の振込みを行い、3日中に、直筆の謝罪ならびに念書が届くよう、またもし無理そうなら、とりあえずFAXで念書を送ってくれるよう依頼した。
 しかし、今までならメールをすればその日のうちに連絡が来ていたのが、お金を振り込んでからは連絡が止まってしまった。
 そこで、期日前日の午前中に業者宛に電話をした。すると担当者が出て、「当初聞いていた話と違う。そういった内容なら30万円必要だ」と言われた。

 それを聞いて、自分はこの業者から保証人の念書を貰い、以前勤めていた会社に提出して会社より念書と引き替えで離職票を貰った後、その離職票をハローワークに提出して、その月からハローワーク指定の学校に通う予定があったため、どうしようかパニックになって悩んでいると、「その30万円は保証金だ。5年過ぎれば手元に戻ってくる。必要書類を送るのでそれに記入して30万円を振り込め」といわれた。翌日、送られてきた書類には、銀行で使う印鑑の複製?と怖くなる物を要求するのがいっぱい入っていた(もちろんホームページには書かれていない)。

 もうどうしていいかわからず、ネット上で相談したところ「それでもし30万円振り込んだら、今度は100万円よこせといわれるかもしれないからやめた方がいい。30万円は5年経ったら返すと言っているそうだが、そんな約束はまるで当てにならない」とアドバイスを受けた。しかし、保証人の念書を手に入れて学校の入学式までに間に合わせなければならないと焦っていた私は、このアドバイスにある“約束”からヒントを得て業者担当に電話する。

 「絶対に30万円戻ってくるのか」
 「始めに振り込んだ2万円と30万円で、今度こそ間違いなく保証人の念書を書いてもらえるのか」
の二つの問いに対して「間違いない」と答えたので、
 「では、そのことを証明するあなたの念書を送ってください。そうしたら振り込みます」
と言ってみた。
 すると、担当者は「30万円振り込んだら送ります」と言ってきた。これはもう、お金を振り込んでも絶対に念書も送ってくれないし5年待っても返してくれない、と確信したので、始めに振り込んだ2万円を返してくれるようお願いしたところ「それはできない」の一点張りだった。

 もし、あの時 アドバイスを受けずすぐに30万円振り込んでいたらと思うとぞっとする。しかし2万円という被害は、何ヶ月経ってもその悔しさは忘れられるはず、泣き寝入りはしたくない。

 以上の内容が相談者より知らされたため、その内容について検討を行った。
 ただ、相談内容を見ると、実際は全くの第三者が、相談者の“親戚”という形で、保証人としての文書を発行してもらうという契約と見受けられた。
 もし、親戚のなりすましであれば、前の勤め先の会社を騙す形になるのではないかという恐れがあった。

 そこで、この契約内容自体の正当性について疑問が残り、最終的には相談者に対し、この件については、残念だが解決に向けて具体的なお手伝いは出来ないと伝えた。
 相談者と前の勤め先との間の詳しい事情はあまり深入りしなかったが、ただ、離職票については、どのような形での退職であれ、会社が離職票の発行をしてくれないということであれば、その会社を管轄するハローワークに相談するよう伝えた。

 

 解 説

 このサイトのサービスは、保証人のあっせんサービスと見て取れ、外国人や人間関係の希薄な社会では、非常にニーズの高いサービスなのかもしれない。
 そこで、当初の相談では、相談者が単に弱みに付け込まれてサイトからお金を巻き上げられそうになっている構図と見て取れたのだが、詳細を聞くと、その取引の内容から、果たして保護するべき内容なのかどうか疑問が出てきたケースである。

 ただ、もちろん相談者は、今後も支払済みの2万円は返還するよう交渉は可能と思われるが、今までの対応を見る限り、この事業者にもあまり誠意が感じられず、残念ながら解決は難しいと感じた。それより、離職票を手に入れることや、親を説得して保証人としてきちんと協力を得ることを第一に考え、新しいスタートを切ったほうが相談者のためと思うのだ。