第四十六話: 助言の助言

 
相談事例から“今どきの消費者”

第四十六話: 助言の助言

 相 談 内 容

 先日、オークションで未使用のジャンパーを35500円で落札した。
 後日商品が届き、試着を兼ねて家で1日着用していたが、その後、気づいたら袖(合皮)の部分に青っぽい汚れが広範囲にわたって付着していた。そこで胴体の塗料が付着したのではないかと思い、再度袖と胴体を擦り合わせてみると、驚くほど短時間で袖に塗料が付着した。

 これは不良品だということで、出品者に返品・返金を申し出たところ、「1度使用しているのだからこちらの責任の範囲を越えている、その商品は本当にこちらから送った商品なのか?すり替えているのではないか?」とまで言われ、渋られている。しかも返品には応じるが譲歩案がどうこうと言い、よく理解ができない。

 1日着用しただけで商品価値がなくなってしまうような品物は不良品としか言いようがなく、その不良品の返品を受け付けるのは売主の義務ではないのだろうか。
 学校の先生に簡単に相談したところ「返品できるよ、当たり前じゃん」と言われたので、その旨出品者に伝えると、「根拠は?」ときた。時間がなかったので、そこまでは聞いておらず、後日聞いてみるということで、話は途切れている。

 この根拠を教えて欲しい。先生とは週1回の授業でしか会わないので、それまでに知りたい。
 それでも返品に応じない場合は法的な手段に出ようと思うが、どういった方法が考えられるだろうか。また今回の件でかなり無駄な時間を使ってしまったが、その時間的な損害賠償はできるだろうか。

 処 理 概 要

 まず、こちらでは相談者の学校の先生が出された回答に対してのフォローは出来ないということを伝えた。相談者がどのような内容を話し、それに対して学校の先生は、どのような考えから、そのような回答をしたのかの確認ができないからである。

 その上で、あくまで貰った相談内容に対し、回答をすると伝えた。
 まず届いた商品がオークションの説明と明らかに異なる状態の場合、また、それを知っていたら確実に取引を行わなかったという状態であった場合に関しては、約束通りの商品が引き渡されていない、購入の目的が達せられていないなどの理由から、相談者の主張通り、相手に返品・返金対応するよう求めることは可能と伝えた。

 商品は未使用ということであったが、もし中古品であれば、中古品は1つ1つ状態が異なり、全く同じ状態の商品が世の中に存在していないと考えられることから、商品交換という考え方が出来ないため、修理代の請求や、最終的には契約を解除して、やはり返品・返金対応を求めたりする流れになろうと伝えた。

 さらに、もし今回の件がメーカーの原因とする不良品であれば、相談者が取引相手の出品者に商品を返品後、出品者側にてメーカーや販売店に連絡し、出品者側が改めて、メーカーとの間で返品やその他、考えられる対応を求めることは出来るかと思われた。
 ただ、相談者の側においても、1度メーカーに問い合わせて、こういった不具合が考えられないか聞いてみることも一考ではないかと伝えた。

 しかし、一方、こういったネットオークションは、商品を直接手にとって見られない部分においてリスクが高い取引でもあり、特に個人間取引の場合は、やり取りにおいて感情論が先行しがちであること、解決のためには時に互譲の精神が必要な場合があることを理解し、出品者が譲歩を示しているようであれば、前向きな話し合いをしたほうが早期解決につながるのではないかと伝えた。
 最終的に解決がつかなかった場合には、確かに司法による判断によることになるが、その際は簡易裁判所による少額訴訟が検討できること、時間的な損害賠償請求については、この内容から一概に判断することは出来ないが、あまり相談者が期待するほどは認められないのではないかと伝えた。

 解 説

  相談内容的には、オークション取引にて良くあるトラブルなのだが、このケースのように、既に他でも相談し、その回答に対するフォローを求められるときが時々ある。

 よく、消費生活センター等、他の相談機関や掲示板等にて、単なる相談先の紹介ではなく、具体的な回答を貰った上で、さらに相談者が他からも回答がほしいという考えから「○○ではこう回答貰いました」という形で、こちらに相談をしてくるというケースも多い。
 もちろん、事前に他の相談機関に相談して具体的な回答を受けていても、1からまた新たに相談してきてくれる分には何も問題はない。ただ、あまり複数の相談機関から助言を受けると、その相談の仕方、受け取り手の感じ方により、回答が異なる可能性もある。情報が錯綜し、結局相談者自身が混乱する原因にもなるので、あまりお勧めではないと言える。

 さらに、このケースのように、他から出された回答に対する単なるフォローを求められると、正直、その回答をくれた人に再度問い合わせをしてくれたほうが確実ではないかと思う。
 さらに困るのは、他の相談機関等によりあっせん等で話し合いをしている最中に、相談をしてくるケースである。少なくともあっせん中は、その機関を信頼し、その機関に絞って相談を継続して欲しいと思う。