第四十七話: 後からネットで調べたら・・

 
相談事例から“今どきの消費者”

第四十七話: 後からネットで調べたら・・

 相 談 内 容

 オークションで高級品という帯を19,866円で落札した。出品者の評価は「新規」だった。オークションの決済代行を利用してクレジットカードにて支払いを済ませた。落札後、品物(帯)は仕立てもお願いしたので、受け取りは2週間位後になった。

 ところが決済後、出品者の悪い評価があるのに気がついた。内容をみてみると詐欺とのこと。以前別のIDで出品していて、停止、登録削除になり、新しく現在のIDで出品しているとのこと。以前のIDをインターネットで調べてみると、同じような品物が売られていたことがわかった。
 オークションを始めたばかりなのでどのように対処していいものか、戸惑っている。詐欺と分かったら取引をとめたいし相手への入金も中止したい。ただ、詐欺だという証拠もない。

 そこで、住所と電話番号がわかるので電話してみたところ、Rという外国人と思われる女性が応対した。「オークション担当者はなんて名前ですか?」と聞くと、偶然なのか私の苗字と同じ「S」だという。「担当者は海外に行っていて、来週の火曜日に帰って来る」と言われた。私の名前は終始名乗らずに「オークションを落札したもので、いつ品物が受け取れるのか知りたかったので電話した、また電話します」と言って電話を切った。
 以前振り込め詐欺に遭った人から、相手の名前を聞いたとき自分と同じ苗字だったということを思い出し、偶然なのか今回私の苗字と同じだったので、マニュアル化された詐欺なのかという気もしてきた。

 このままスムースに取引が終わればよいのだが、詐欺かもしれないという疑いが出たので、もしそうならば未然に防げれば防ぎたいと思う。今の段階でどのような手段があるのか。

 処 理 概 要

 取引した出品者が不審とのことだったが、出品状況を見ると、帯や着物類を複数出品しており、事業者と思われた。しかし、事業者の場合、法律上義務付けられているサイト上での事業者所在地や名称、責任者氏名等の表示が確認できなかった。

 出品者の評価欄を見て、不安に思う相談者の気持ちは理解できるが、仕立て上がりの商品引渡しまでに未だ時間があり、現時点でこの出品者が詐欺をはたらいていると断定することは難しいように思われた。
 すると、落札後、仕立て上がりまでに相談者が行うキャンセルにおいては、基本的には交渉の上、あくまで出品者側の承諾が必要と伝えた。

 しかし、もし引渡し期日を過ぎても商品が受け取れず、連絡が取れなくなった場合は、オークションの補償制度の申請が考えられるが、対象はあくまで落札金額であり、その後の仕立代は落札金額には含まれないので、補償対象外の可能性があると伝えた。
 オークションサイトに問い合わせを行い、調査の結果、問題があればオークションサイトが今回のIDも削除するのではないかと伝えた。

 その後、相談者より、だいたい予定通りに品物は届いたとの報告があった。
ただ、帯は画面の写真で見たものより、実際見劣りはしたが別物ではないと思われること、生地が引きつったところがあったりして、高級品・最高級という表示はちょっと誇大広告のような気はするが、自分は帯に詳しくないので、普段に使うのには支障ないかと思い、このまま使用しようと思っているとのことであった。

 解 説

 ネット取引に限らず、一旦、契約や申込みをした後から、ネットで事業者の情報を調べたら、実は悪評ばかりだったということに気付き、あわてて解約を希望する人が増えてきた。誰でもネットで情報発信でき、また情報を収集できる世の中になったため、これを解約の理由に述べる相談者も多く現れるようになった。
 消費者側の気持ちになってみれば、悪評の多い事業者との取引なんて確かにゴメンである。信頼関係が築けないのは言うまでも無い。

 その気持ちは痛いほど分かるのだが、一旦契約が成立してしまった以上、例え悪評があるからといっても他に権利の主張が出来る理由が見当たらなければ、実際に被害を受けていない段階においては、それで契約の解除や錯誤による無効をすぐに主張することは出来ず、単に「お宅はネットで悪評があるので止めます」とは、なかなか言えないのである。ネット上の、特に匿名で書き込まれているような情報に、どこまで信憑性があるかも判断することが出来ない。そう回答すると、「被害を未然に防ぐことも必要じゃないか」とお叱りを受けるのだが・・。
 せめてネット取引であれば申込みボタンを押す前に、お願いだから取引前に、その事業者の評判を確認して欲しいと思う。

 この相談のケースでは、実はこの後、相談者が取引したIDも削除されていたことが分かり、まさに冷や汗モノだったのである。