第四十九話: ババを引いてしまった

 
相談事例から“今どきの消費者”

第四十九話: ババを引いてしまった

 相 談 概 要

 オークション上にブランドのマフラーが出品されており、どうもそれが違反品であったらしいが、当方はそれが違反品と知らずに落札、取引をした。
 後日、不要になった為、同サイトで出品したところ、違反品出品と判断され、一方的に利用登録停止処分を受けてしまった。場の提供したオークションサイトには責任や過失は問われないのだろうか。
 不要になったので出品したら「違反品でした」で運が悪かったと泣き寝入りしなければならいのだろうか。毎日がつらい。

 以下、メールのやり取りの経緯である。 (注:全て概要)
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・オークションカスタマーサービスより  
(内容)
 今回のオークション出品物について、権利者団体より、権利者の商標権を侵害する偽ブランド品である旨の通知を受けた。オークション利用規約では、他人の権利を侵害する商品の出品を禁止しており、そのため利用規約に照らし利用停止措置を実施した。
 他にも利用IDがあれば全て停止になる。これらは利用規約に基づく措置であり、オークション側は何人に対しても一切責任を負うものではない。
 また、利用停止措置を講じたIDについては今後解除されることはなく、来月以降に登録情報を削除し、登録削除済みとなったIDは再度利用することが出来ない。
 本件について、不明な点があれば、利用していたすべてのIDとともに、権利者団体に連絡を取って欲しい。
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・相談者より
(内容)
 因果関係の根拠なしに権利者団体の意見を優先する貴社の姿勢へ疑問を投げかけたい。
 今回の出品物のほとんどが、貴社のオークション媒体を経由して購入物であり、また、その手数料も支払っている。過去の評価履歴を法務部担当へ調査申請を願う。万一、貴社が介在した出品物であれば、今回のID削除は逸脱した越権行使を受け止める。結果によっては次回株主総会において親戚一同にて申し立てを検討する。

 こちらも違反の因果関係が明確であればここまでの要請したくないが、スーパーバイザーレベルの観点ではなく消費者(利用者)へ裏づけ確認の事前連絡をするべきではないだろうか。創立者が泣いてると思う。
 「不適切な商品を出品している」と判断した因果関係の連絡がなき場合は、こちらでも誠心誠意確認させていただき判断に疑いがある場合は、警視庁@police相談し、あらためて貴社へ通知させていただく。
 また、本日、mixi(SNS)の当該に関係するコミュニティー、米国Googleのブログへ今件の公開、また、併せて米国e-bayへ事例照会の相談も判断材料の一つとさせていただく。
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・オークションカスタマーサービスより  
(内容)
 弊社からの連絡内容は先のとおりである。権利侵害に関する事柄につきましては、権利者団体へ問い合わせて欲しい。
 その際、解説を約束するものではないが、問い合わせの際に、利用していたIDなど、すべての状況を伝えると状況の解説があるようである。
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・相談者より
(内容)
 「貴社が前段階で、違反品をパトロールしきれず出品していた」ということを理解いただけないのであれば営業停止処分させたい位である。
 貴社が違反品をオークションコンテンツ媒体で出品。
 当方が貴社オークション媒体経由にて半年前に購入。結果、不要だったので貴社オークション媒体を利用して出品した。結果、ババを引いた? 
 あのマフラーは1点や2点じゃなかった、それが違反で、前出品者を既にIDを停止しているのであれば、なぜそのことを事前に落札者様へ連絡しないのか? 貴社は警察並みの泳がせ捜査までするのか?

要請1
書面にて経緯報告書を要請する。
社会的責任(CSR)を背負って経営している以上、オークション担当者レベルではなく、御社名にてお願いしたい。あなたたち従業員のコンプライアンスの為でもあり、貴社サービス利用者の為でもある。
・7営業日中  
・7営業日で不可であれば、可能な日時を事前連絡。
・必ず貴社法務部へエスカレーションして欲しい。

要請2
入札者様へのお詫びの文面通知。
できない場合は当方、当該利用停止期間における機会損失の返金を求める場合がある。たとえ1円でも働いて稼ぐのは大変なことである。

要請3
オークションパトロールのQCのレベルアップを施して欲しい。このままでは御社の今後の信用問題劣化や株価下落、はたまた倒産に繋がりかねない。

なお、以下は権利者団体からの見解である。

『メールを拝読いたしました。
弊法人は、弊法人会員であります複数のブランド権利者が自らインターネットを巡回・監視し発見した商標権侵害物品の出品・行為の情報を取り纏め複数プロバイダーに伝達するという活動を行っております。従って、商標権侵害物品・行為であるかないかの判断は各権利者が行っている事になります。
又、情報を受けたプロバイダーがどのように処置するのかは当該のプロバイダーの任意の判断に委ねられておるのが現状であり、放置するのか該当商品だけを削除するのかIDを削除・使用停止にするのか関連するID全てを利用停止にするのかについて弊法人は口出しできませんし、プロバイダーからどう処置したのかについての報告も受ける事が出来ません。
以上が全体状況であるとのご理解を頂きました上で下記の貴職のケースについての以下の通りご説明致します。

ID:***さんにつきましては、権利者より、出品されていた商品が商標権侵害物品であるとの指摘がございましたので、弊法人で確認の上、オークションサイトに伝達いたしました。
商標侵害物品であるとの判断に至った根拠は、偽造品対策の必要性から課せられている守秘義務に基づき開示する事はできませんし、過去の判例でも権利者側に開示義務はないとされております。守秘義務の許す範囲で申し上げますと、出品されていた商品の画像で使用されている部材等が真正品と異なると判断が為されましたし、同画像は権利者側に証拠として保存されております、とのみ申し上げられます。
以上、ご回答まで』

 筋の通らないものをこのまま野放しにするわけにはいかず、無駄に労力を費やしたくもない。
 上席と勘案の上、最後まで筋の通るサポートをして欲しい。
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 処 理 結 果

 相談者は、過去に同じオークション上で落札、取引した商品を、不要のため再度オークションに出品していたところ、その商品が違反商品として削除され、さらに利用していたIDも停止措置を受けているとのことだった。
 ただ、やり取りにもあるように、相談者が落札して取引したという前出品者についても、既にオークションサイトより処分されている。

 当該オークションのガイドラインを確認すると、出品を禁止されている商品の1つとして、「著作権、肖像権、信用など他人の権利を侵害する商品」とされている。

 そこで、今回の出品商品が他人(ブランド)の権利侵害をしている商品に該当するのであれば、オークションサイトによる、その出品の削除措置は、ある程度止むを得ないことと考えられると伝えた。
 ただ、相談者が当該商品を、過去の当該オークションで正規品ではないことを知らされず、または正規品と謳われていたにもかかわらず、正規品でなかったのであれば、そのときの出品者と、改めて返品等の交渉する流れになるのではないか、と伝えた。

 また、同ガイドラインには「削除権」として、出品に対する削除権が定められており、また利用規約には、IDへの削除権利をオークション事業者が保有しているとされていた。
 もちろん、この内容全てに正当性があるかどうかを、現時点で判断するのは難しいが、ただ、当該事業者の提供するオークションサービスを利用する際は、この内容に原則同意の上、利用申込みをしていると考えられる。
 すると、相談者のつらい気持ちは分かるが、これら全てをかんがみる限りにおいては、今回のオークション事業者の対応が不当であるとは言い切れないと伝えた。

 相談者からも、こちらの説明に納得したということだったので、終了とした。

 解 説

 相談者への回答では、そのつらい気持ちに理解を示したのだが、正直、あまり共感、及び同情の余地のない相談内容である。
 相談者は、「ババを引いた」と表現していたが、ただ、手元にある商品が、本当に「本物」であると信じて再出品していたのかどうかも疑問である。権利者団体とはいえ、オークション画像を見ただけでニセモノと判断するような商品であれば、それなりの商品ではなかったのだろうか、と思う。
 そして出品物がニセモノと判断されてしまった以上、それを理由にIDを削除されてしまっても、それを不当とはいえないだろう。逆切れしたところで、残念だが誰も救えないのである。

 さて、当該オークションのニセモノやコピー商品の出品については、それを見つけた一般ユーザからも、オークションサイトと連携している各権利者団体や権利者に申告することが出来る。それら申告を受けて、権利者団体や権利者が違反品と判断すれば、それをオークションサイトに連絡し、オークションサイトはその内容に従って、該当IDの停止や削除などの措置を講じる。

 ただ、相談者のオークション事業者とのやり取りを見たところ、オークション事業者は、“権利者団体の申し出に従ってIDを削除した”という内容の回答をしており、また、権利者団体は、“IDを削除するかしないかはオークション事業者の判断”と答えている。
 お互いに責任を回避し、たらいまわしとも受取れかねない回答をしている点が、非常に気になるところである。

 また、この相談者のように、何かを相手に訴える際に、上から目線でものを言ったり、何か権限があるように見せたり、これを言えば相手は怯むんじゃないかと思うような言葉を列挙したりして、相手より少しでも優位に立って自分の意見を通そうとする人も増えてきている。
 自分の不利益は社会の不利益というような、消費者の権利をちょっと履き違えている相談者の場合は、解説の冒頭に書いたように、たとえその主張に正当性や合理性が見いだせなくても、それを頭ごなしに否定するのではなく、言い方に注意して、こちらの説明に納得してもらえるための、言い回しのテクニックが必要である。そのテクニックを要するタイプの相談者が、各相談現場には確実に増えてきている。