第五十一話: 某巨大匿名掲示板への書き込み

 
相談事例から“今どきの消費者”

第五十一話: 某巨大匿名掲示板への書き込み

 相 談 概 要

 2chの「お受験板」に書き込みしたら、メールアドレスが表示になってしまい、名前がフルネームででてしまっている。
 居住区もメールアドレスでわかってしまう。(※注:相談者のアドレスはケーブルテレビのドメインで、そのドメイン名に居住区の名称がそのまま使用されているため)

 息子が私立中なので、そこから人物まで特定可能かもしれない。私のほうでは、メールアドレス欄には前3文字しかアドレスいれていないが、アドレス開示の場合はカナカナ4文字と規定ではなっているようである。ずっと非表示で半年くらいまえに変更され表示になったとのことだが、知らなかった。

 本当に困っていて、昨日から食事もできず、眠れず、会社もいけなかった。なにぶん、インターネット初心者なので、なにをどうしたらいいのかわからない。とりあえず、プロパイダーに相談しようとしたのだが、ケーブルテレビは今日休みである。どうしたらよいのか、至急、教えて欲しい。

 処 理 結 果

  回答を返す前に、相談者より立て続けに「状況が悪くなっている、息子の名前が書き込まれている、削除を依頼したがダメだった」との連絡があったため、具体的にどのような状況になっているのか、また対象のURL(スレッド)を教えてくれるよう伝えた。
 また、こちらでは相談の時点にて状況は分からないにしても、当該掲示板において、削除依頼は原則公開されること、また削除対象に該当するものでなければ基本的には削除されないため、よほどの事情がない限り、あまり当該掲示板への削除依頼は勧めないと伝えた。
 さらに、仮に名前を書き込まれたといっても、それらに過剰に反応するのはかえって逆効果にもなると伝え、これら掲示板での書き込みによって実生活に支障が出ているのかどうか、それについても連絡をくれるよう伝えた。

 すると相談者から連絡があり、今は催眠剤を使用しているが、このまま進んでしまったら倒れそうだということ、ただ、こちらからの回答を受けとる前に、既に削除依頼してしまったため、結果、ますます大変なことになってしまい、もうPCさわるのも怖い状況であるとのことであった。
 精神的にスレッドのURLを貼ることが出来ないということで、スレッドの名称を伝えるので検索をかけて、そのスレッドを見つけて欲しいとのことであった。
 ただ、現実の世界では、変わったことは今のところ特になく、スレッドがどういう流れになっているかは気になるが、とても今の不安定な精神状態では見ることは出来ないため、こちらでチェックしてもらえると助かるということであった。

 そこで、検索して該当のスレッドを見つけたが、相談者もしくは息子が特定されるような書き込みは特に確認できず、また既にスレッドがPart○と進んでいるので、一般のブラウザでは過去のスレッドは確認できなかった。 
 さらにこの「お受験板」ではローカルルールがあり、それによると公ではない個人実名を出すことや、在校生の実名イニシャルトークなど、内輪での会話と判断できる内容は禁止とされていたので、もしこれに違反している書き込みがあった場合は、既に行ってしまった削除依頼により、削除されることもあるようであった。

 そこで相談者には、現実の社会にて特に何も問題が発生していないようであれば、今後はこのような掲示板を気にせず、あえてこれからも見ないようにする方が精神的にも賢明なのではないかと伝えた。
 もし、書き込みによって現実に何か問題が発生した場合は、別の法的手段が検討可能な場合もあるが、悪い方向ばかりを考え、これから起こるかどうかもわからないことを思い悩むより、しばらく様子をみてはどうかと伝えた。その上で、何か具体的な問題が発生したり、心配であれば、いつでも連絡をくれるよう伝えた。

 相談者からは、今は精神安定剤を飲んでPCに触らないようにしているため落ち着いているが、実は他にも「お受験板」で同じ内容が話題になっているスレッドがあり、そこの書き込みも心配であるということであった。自分たちのことが書かれているとのことである。
 ただ、こちらからアドバイスされたように、なるべく今後掲示板は見ないようにして、普通に生活してみるとのことであった。

 そこで、こちらで、そのスレッドの書き込みについても確認したが、そこでも特に相談者、若しくは息子が特定されるような書き込みは確認できなかった。

 相談者は、スレッドの書き込みの確認について、家族や知人に頼ることも出来ないため、スレッドの書き込み内容を、依頼に応じこちらが確認してくれることについては感謝しているとのこと、ともかく子供の学校名や塾が特定されないことを祈るばかりで、子供が特定されるのではと思うと、薬を飲んでいても眠れないとのことであった。

 現在も相談者からスレッドの書き込みが心配であるとの連絡を受けると、その該当スレッドの内容について、こちらで確認している状況である。

 解 説

 一般消費者相談、及び各地消費者センターからのホットラインの問合せにおいて、いわゆる2chの書き込みについて相談を受けることが何度かある。
 基本的には掲示板に誹謗中傷の書き込みがなされている、対処方法や削除方法を問う内容である。2chへの削除依頼は独自のルールがあり、さらに各板においても事例のようにローカルルールが決められている場合もある。

 こちらの消費者相談で、この2ch内のある板で一年中誹謗中傷を受けて困っている、警察に言っても対応してくれないというものがあった。
 やはりこちらで事例のときのように指定された該当スレッドの書き込みを確認すると、どうもこの相談者のネット上のブログやSNSで書いている日記、プロフが、全てそのスレッドの「住人」たちによって監視されており、相談者がそれらに書き込んだ内容について勝手に盛り上がっているものであった。
 ただ、スレッドの目的は、決して相談者のブロクや日記を炎上させることではなく、ただただ監視して、その書き込みについてこのスレッド内で揶揄しているだけのものである。

 ただ、スレッドの中に出てくる相談者個人に対する情報は、相談者がブログ等で自ら公開しているニックネームや性別、年齢程度であり、相談者を特定するような個人情報については何も書き込みはなされていなかったため、残念ながら削除依頼したところで削除の対象にはならない可能性も高い。本人所有のブログ等が炎上するといった被害を受けているわけでもなかった。
 さらに問題は、この相談者のブログ等の内容を揶揄するだけのために当該スレッドが1つ立てられているという客観的な事実である。こういっては難だが、正直、この相談者のブログ等への書き込み内容についても、大分読み手に不快感を与えるようなものであったということが否めなかった。
 最近は、個人が違反行為、社会や他人に対し迷惑をかけたことを得意げに書いたり、芸能人の失言やコメントなどによって、対象のブログが次々炎上するなど、ネット上で公開して良いことと悪いことについての判断が、かなり厳密になりつつある。

 自ら書いた内容について炎上してしまった場合は火消しも必要なのかもしれないが、ただ、知らないところで盛り上がっている掲示板に対しては、個人が特定されてなく、また実生活で影響が無い限りは、基本的には放っておいて、時間が過ぎて沈静化するのを待つほうが良いのではないかと思われる。 ただ、そのためには、少なくとも、しばらくの間はおとなしくしていて、新たなネタを提供するようなことは避けたほうが良いのだろう。
 ただ、あまりに酷いようであれば、法務局の人権相談所に相談するという手も考えられる。

 ちなみに、この事例の相談者の該当スレッドについては、現在もブラウザのお気に入り機能に登録しており、相談者の依頼に応じ確認を行っている。このケースは取引に関するトラブルとは直接関係は無いが、匿名掲示板により被害にあう消費者側の心情ということで、このコーナーに追加した。