第五十三話: オークションモラルの低下

 
相談事例から“今どきの消費者”

第五十三話: オークションモラルの低下

 相 談 概 要

 オークション(個人間取引)でポータブルプレーヤーを18,000円で購入し、いざ自分の手元に届くと全く動かず、出品者に聞いたところ、音楽を取り込むためのパソコンが悪いのではないかと言われた。
 自分のパソコンは古かったため自分がいけなかったと思い、自分も同オークション上でこれを出品し、新たな落札者に譲ったところ、その落札者から故障していると言われた。
 早速、元の持ち主に言うと、「自分が持っていたときは動いていた、自分はもう関係ない」と言っていた。

 よくよく話を聞くと、その人も同じように別な方から壊れた状態で届き、郵便局に修理代を保証してもらったそうである。壊れたものがたらい回しにされた状態である。

 こういった場合はやはり諦めるしかないのだろうか。

 処 理 結 果

 まず一般論として、届いた商品がオークションの説明と明らかに異なる状態であれば、もちろん返品・返金対応を取引相手に要請することは可能であり、さらに、今回であれば、特に取引相手が、商品に不具合があることを故意に隠して出品しているような場合(相談者の売主)、また、その商品が動かないことを全く知らないで出品していた(相談者)としても、結果的には同じように考えるであろうと伝えた。

 そして、基本的に返金等の対応は、売買契約の当事者がそれぞれ対応することになるということ、今回のケースであれば、先ず相談者は購入した買主に対し返品・返金対応を行い、その上で、相談者の先の取引相手である売主に対し、改めて返金対応を求める流れになるのが一般的と伝えた。

 ただ、そもそもネットオークションは、商品を直接手にとって見られない部分においてリスクが高く、また補償等対象外(今回は決済手段により補償対象外取引であった)の取引方法を行うと、さらに取引のリスクが高まることを伝えた。
 あきらめる必要は無いので、買主側から返品を受けた後、売主に先ずは書面で交渉するよう伝え、その方法を助言、ただ、譲歩の姿勢も見せるよう伝えた。

 ただ、その場合に、最終的に売主側の相手に誠意が無く解決が出来ないような場合は、不本意だが相手方にはしかるべき評価とコメントを残し、気分の悪い思いを断ち切り早々に忘れるほうが精神面から見ても有効かもしれないということ、そこまで考えた上で良く考えて行動するよう伝えた。

 解 説

 このケースでは、壊れたポータブルプレーヤーが、オークション参加者の間を点々としている。誰かがそれを止める必要があるのだが、誰も自分のところで止めようとしない。それどころか、そこで発生する恐れのある自分の損害を、新たな買主に押し付けるような形で、商品が点々流通しているのである。
 時にこのケースでは、相談者の売主は、郵便局から保証金を貰った上に、動かないままの商品をそのままの状態で、動かないことを隠して出品していたという可能性が見える。

 もちろん、動かない商品が届いた場合、本来であれば売主相手にその矛先は向かうべきはずであるが、そこで売主と交渉したり全てあきらめてしまうのではなく、自分がされたと同じように不具合を隠したまま新たな買主を探し、その買主も被害に遭うことを承知の上で、万一買主が返品しろと言ってきたとしても、自分もその交渉に応じない、その人がまた誰か他の人を被害に遭わせて帳尻を合わせるよう、流れを持っていってしまうのである。

 これは参加者のモラルに関わっていることである。
 オークションのような個人間取引の場では、いろいろな性格の相手がいるわけであり、取引を開始するまで、相手がどのような性格なのかを把握することが出来ない。従って、参加者それぞれが最低限のモラルを持ち合わすことにより、全体的にトラブルがなるべく発生しないように動き、またトラブルが発生しても、なんとか上手く解決しようと流れるのだが、その参加者のモラルが低下していっているようでは、このような自浄作用を期待することが出来なくなってしまう。

 また、大手オークションサイトに定められた取引方法を守らず、それでも平気で取り引きできてしまう参加者が多いことも、参加者のモラル低下が嘆かれるひとつの要因でもある。オークションサイトでは、単に規約やガイドラインを厳しくするだけではなく、参加者全体のモラルが上がるような大々的な啓発活動も重要だと思われる。