第五十六話: 交換と言ったら新品とに決まっている・・ハズ?

 
相談事例から“今どきの消費者”

第五十六話: 交換と言ったら新品とに決まっている・・ハズ?

 相 談 概 要

(1)
 液晶ディスプレイをオンラインショッピングのサイトで注文。同液晶ディスプレイには「不良・故障があった場合、翌営業日に良品を送る」という保証が付帯していた。
 到着した液晶ディスプレイには、画面の一部、鉛直方向に緑色の線が表示されつづけるという不良があり、同社にメールで不良の連絡と交換を要求したところ、同社からは、「良品」を送るとの連絡があったが、「送る良品は中古品」という注釈がついていた。
 購入後間もない状態での初期不良であったため新品への交換を要求したが、「新品のディスプレイが無く、中古品しかない、よって中古品にしか交換しない」と連絡があった。

 ところが、同社のWebサイトを見ると、同一機種のディスプレイは今でも注文できる状態になっている。また、同社にそのことを問いただすと「確かに同一の機種のディスプレイを今でも売っている」ということを認めているが、それでもなお「新品に交換したいが、新品のディスプレイが無く、中古品しかない、よって中古品としか交換しない」という主張を繰り返している。

(2)
 去年の5月にプリンターを買ったのだが、11月に給紙トラブルで壊れた。1年間の保証期間内であったため連絡すると、「この商品は修理が出来ない物なので交換させていただきます」といわれ、交換してもらった。
 先日、又同じトラブルで壊れたため、11月から1年以内のため交換してもらいたいというと、購入日より1年たっているため有料交換だと言われた。「新品から同じ壊れ方するのはおかしい、新品に交換してくれたなら1年間は面倒見るべきでは?」と聞くと、「交換商品は、新品商品ではなく工場出荷時に動いていた機械です」と言われた。
 「じゃあ、誰が何年使った機械か解らない機械を新品だと騙して送ってきたのですか?」と聞くと「担当者は新品だとは言ってないし、交換を持って修理だから1年間の保証期間はすぎている」という。誰が何年どんな使い方をしたか解らない機械を工場出荷時に動いていたからとして交換するのは、保証という面でも信用という意味でも間違っていないだろうか。

 処 理 結 果

(1)
 事業者自らが「新品と交換」を明言していない場合(今回は「良品を送る」となっているとのこと)、交換品は必ずしも新品で無ければならないかどうか、非常に判断が難しいと伝えた。

 もちろん、引き渡した商品に不具合があれば、基本的には事業者側の約束の不履行にあたるので、当然事業者は引き続き不具合のない商品を購入者に引き渡す義務を負っていると考えられるが、ただ、不具合のあった商品が正常品との交換により問題なく使用できるようになれば、一応、事業者側の対応として特に問題は無いとも考えられる。
 交換品が中古品であるからといって、必ずすぐに故障するとまで断定するのもなかなか難しい。

 従って、相談者の主張は心情的には理解できるが、今回の事業者の対応が必ずしも合理性に欠けているとまでは言い切れず、販売中の商品を含め、新品への交換を事業者側が拒んだ場合、それを強制することも難しいのではないかと伝えた。

(2)
 事業者の販売条件には、以下の記載があった。

「保証」
1.
別途定めのない限り、自社ブランド名が付与された製品(第三者製品及びソフトウェアを除きます)が納品書に記載される御届先に納品された日より1年間、通常の使用を妨げるような材料及び製造上の欠陥がないことを保証します(以下「標準保証」といいます)。

3.
別途定めのない限り、納品日より1年間、自社の施設に返却された製品を修理または交換します。お客様には事前に返却に係る運送費等をご負担いただき、運送に保険をかけていただくか、あるいは運送時の滅失毀損に関する危険をご了承いただく必要があります。事前に運送費用をお支払いただいた上で、修理品または交換品をお客様に配送します。

 すると、商品購入時(去年の5月)に1年の保証期間があった場合、その保証期間が『納品書に記載される御届先に納品された日より1年間』とされていることを考えると、その保証期間内に商品が交換された場合、その保証期間は、交換日からさらに1年延長されるのではなく、あくまで商品納入日から1年間であるものと見受けられた。

 そこで、交換された商品が新品でなかったことについて、当該事業者では他で返送されてきた不良品を修理し、それを交換品として利用しているようではあるが、ただ、販売条件の「保証」3.には「新品と交換」とまでは謳われていないことから、そもそも交換対応の際に新品との交換を強制することが難しい上、保証期間内に使用できなくなった商品が交換により使用できるようになれば、一応、保証期間内の対応として特に問題は無いのではないかと伝えた。
 保証期間内の場合は基本的には修理対応と考えられるが、販売条件では交換もありうることがかかれており、その際に新品と交換するようユーザが主張すれば、逆にユーザに利得が生じる可能性もある。

 ただ、保証とは別に、交換品の瑕疵担保責任が問える可能性もあるので、法律相談で確認してみることも伝えた。

 解 説

 当該事業者に対するこの交換品に関する相談が、こちらに時々寄せられている。
 当該事業者では、コスト削減や無駄を出さないためなのか、ユーザより不具合で返送されてきた商品を修理し、それを再び別の不具合や修理等で返送されてきた商品との交換品として利用しているようである。

 事業者は、交換する商品は「良品」「修理品」「交換品」とし、「新品と交換」とはサイト上でもどこでも一言も言っていないのだが、しかし一方、ユーザに取ってみれば、特に初期不良などで交換対応となった場合、交換されて届く商品は新品を期待することも多い。(ただ(2)のケースで6ヶ月使用した商品を新品と交換しろというのは、消費者側に不当利得が生じるような気もするが)

 特に精密な電子機器は通常の家電商品と比べ、どうしても初期不良や故障が発生しやすい。もちろん事業者に無償で対応を求めることは可能だが、修理に出してそれが戻ってくるまでの間にかなりの日数を要する。
 毎日のように利用している電子機器が何日も使えなくなることは不便を強いられるわけでもあり、そこを修理ではなく交換として、すぐにユーザの手元に届けることが出来れば、それはそれで意味のある対応ともいえる。

 すると、このようなトラブルを避けるためには、事業者側が「初期不良や保証期間内における交換の場合は、交換品は新品とは限らない」と、もっと明示しておく必要があるのだと思われる。
 そして、当該事業者が外資系事業者であったが、消費者側においても、安さが売りの事業者と取引するというのは、それなりの顧客対応しか望めないという外資の考え方に対する理解も、ある程度は必要なのかもしれない。