第六十二話: 落選を前提に申し込みすると・・

 
相談事例から“今どきの消費者”

第六十二話: 落選を前提に申し込みすると・・

 相 談 概 要

 2010年ワールドカップのチケットをインターネット上でカード決済で申込みを行なったが、当選のメールがあり、3名×3日分×1チケット(2,100us$)=18,900us$の請求とのことだった。
 カードの限度額は100万円であり、限度を超えている事と、当選すると思っていなかったので、できたら全てキャンセルしたいのだが、先方のメールが英文で読めないことやキャンセルの仕方がわからなくて困っている。場合によっては破産しかねない状況。

 処 理 結 果

 相談者は英語がほとんどできない状況であった。
 ただ、高額な請求であったため、先ずはFIFAのサイト上の記載内容を確認したところ、当選したチケットのキャンセルは不可とされていた。
 しかし、下記のFAQページがあった。

What if I have insufficient funds on my payment card account?
支払いカードの口座が、残高不足だったらどうなるのですか?

If you have insufficient funds on your payment card account and therefore your payment is not processed successfully, your application will be cancelled.
支払いカードの口座が残高不足で、決済が行われなかった場合、貴方様の申込みはキャンセルとなります。

 すると、サイトからの請求額がカード与信枠を超えた場合において、カード認証が下りなければ、相談者の申し込みは自動的にキャンセルとなる可能性があった。したがって、先ずはカード会社に問合せを行い、与信枠を超えた請求があった場合のカード決済の対応を確認しておくよう伝えた。
 また、サイト上には、その他「FAQを読んでも問題が解決されなかった場合はメールアドレスに問い合わせて下さい」という記載もあったので、FIFA指定のアドレスにも、念のためキャンセルの意思表示を通知しておくよう伝えた。

 相談者のキャンセル通知においては、こちら相談窓口で翻訳の手伝いを行いFIFAにキャンセルの通知を行った。しかし、FIFAからの回答は、抽選前であれば申し込みのキャンセルが出来るが、それ以降のキャンセルは出来ないこと、ワールドカップ開催が近づいたら転売方法をサイト上で告知する、といった回答であった。

 一方、カード会社の回答は、100万の限度額を超えての決済は出来ないとの回答だったが、同日、カード会社に請求がきているか相談者が確認したところ、FIFAより翌月支払いで213,305円が計上されているとのことだった。

 つまり、FIFAからは、18,900us$が一度に請求されるものと思い込んでいたため、限度額を超えての請求としてカード会社で撥ねられ、サイト上に記載のあるように申し込みは自動的にキャンセルになると考えていたが、どうも分割(?)して請求がなされているようであった。そのような請求方法を取ることは、サイト上及びFIFAから相談者に届いているメールのどれを見ても記載がなかった。
 相談者は、カード会社に問合せ、これ以上の請求があがらないようにカードを解約したとのことだった。

 ただ、これ以上の請求がFIFAからあがらなかったとしても、チケットのキャンセルは出来ておらず、また21万弱の請求をカード会社に拒む理由がなかなか見つからないため、FIFAには再度キャンセルのメールを相談者から送った。
 しかし、FIFAからの回等は、前回届いたメールとほぼ同じ内容であった。
 現在、相談者は残金を支払いチケットを入手するか、21万弱を支払って今後払わず強制的にキャンセルするかの選択を迫られている。

 解 説

  2010年に南アフリカで開催されるワールドカップのチケットに関する相談である。
 もともと当選した際に支払う金額が分かっていたのであるから、支払える見込みがないのであれば最初から申し込みしなければ良いだけの話であり、残念ながらFIFA側にキャンセルに応じる義務はない。

 でも、カードの与信枠を超えた請求であれば、当然認証が下りず、自動的にキャンセルとなると思っていたのが計算違いであった。分割して請求される方法は全く知らされておらず、また、それでは次回はいくら請求になるのかもわからないということであり、その請求方法には疑問が残る。

 ただ、落選を前提に、また英語がほとんど分からないまま英文サイトに申込みするという、相談者の気持ちがなかなか理解できなかった。結局、このような痛い目にあうことになるのであるから、今後は、少なくとも買えない商品の申し込みはしないという基本的な感覚を身につけてもらいたいと願うばかりである。