第七十二話: いい人はやめよう

 
相談事例から“今どきの消費者”

第七十二話: いい人はやめよう

 相 談 概 要

 イベント会社勤務。腹話術用のマスクを探しており、見つけた海外(米国)サイトへアクセスし、63,788円でカード決済。以下の通りやり取りした。

2009年10月 1日  
 販売サイトを見つけた為、日本に送ってもらえるかメールで問い合わせ。
10月 7日  
 日本へ送る為の送料と商品代金を、決済代行会社を通じて入金してほしいとメールが来た為、入 金。
11月16日  
 商品が届かない為、メールで伝える。
11月24日  
 忙しいとメールが来る。
11月26日  
 商品が送られない場合、解約するとメールする。
11月26日  
 いま制作している1カ月以内に送るので解約は困るとメールが来る。

2010年1月13日 
 商品確認のメール連絡をする。(連絡なし)
2月 9日
 商品が届かない場合、カード会社、決済代行会社へ連絡し取引停止してもらうとメールで告げる。
2月 9日  
 今月中に送るから待って欲しいとメールが来る。

3月5日
 商品確認のメールをする(連絡なし)

3月12日 
 商品確認のメールをする。(連絡なし)

 処 理 結 果 及び 解 説

 海外取引における商品未着のトラブルである。
 この相談を受け、こちらでサイトを確認した時点で、既にサイトトップページには経営悪化のため注文は受けていない旨、記載がされていた。
 海外事業者との取引において、既に相手方事業者と連絡不能状態に陥っている場合や、経営状況が悪化しているような場合、解決は極めて難しいといわざるを得ない。
 (これは、実質、国内であっても同じである)

 このような場合、救済方法として考えられるのが、カード会社や決済代行会社による救済システムである。商品が届かないという点で、調査依頼や返金手続きを検討してもらうという方法である。

 ただ、カード会社や決済代行会社へのこれら依頼申し出には、期限が定められていることが多く、その期間も非常に短いのである。当該決済代行会社の場合は、45日を過ぎると基本的には受け付けてもらえなくなる。カード会社においても、例えばチャージバックの申請には大体120日以内という制限が設けられている。

 このケースは、取引より時間が経過しており、これら決済手段における救済が難しい段階にきているかと思われたが、先ずはこれら金融機関へ申し出て相談してみることが考えられる。

 実は海外取引の商品未着においてこのようなトラブルは多く、逆に相手方と全くの連絡不能に陥っている場合は早いが、一定期間は連絡が取れ、商品発送をちらつかせて時間を稼がれてしまい、これら金融機関への申し出期限が過ぎたころに連絡不能、若しくは対応がされなくなるというケースである。
これは、強制的に代金を回収されてしまうとペナルティとなるため、金融機関に苦情が回らないように操作しているものと思われ、海外オークションにおいても同様のトラブルが見受けられている。このケースも、相手方事業者は解約や金融機関へのクレーム連絡に対するメールには反応してきている。

 そのような相手方の考えに気付かず、ただ、相手の言われるままに良い人になって待っていると、やがて被害にあってしまう。相手が商品引渡しをズルズルと引き延ばすような気配が見えたら、そこでもう聞き分けの良い人はやめ次の手段を考えるということも、トラブルを最小限に食い止めるための知恵として必要であるのかもしれない。