第七十三話: それ、どこから出てきた値段ですか?

 
相談事例から“今どきの消費者”

第七十三話: それ、どこから出てきた値段ですか?

 相 談 概 要

 オークション出店業者の1円スタート商品(大量出品)を、商品説明にあった「26万円相当の高級腕時計」との記載を信じて12,000円弱の金額で入札及び落札したところ、他の落札者が予想外に安価で落札していたため、不審に思い、他の業者等で詳しく商品について調べてみると、商品の価格記載はメーカー希望小売価格であり、実際に売買されている価格はその20分の1以下であることが判明した。

 そのような安価な商品であればこちらには何のメリットもなく、あえて大きく価格表示をして消費者の認識を誤認させるような業者の商品は受け取りたくないため、業者に対しその旨伝えたのだが、業者は「オークション規約で入札後のキャンセルは不可となっているため、キャンセルは一切受け付けない。そして、価格はメーカー希望小売価格であるため、何ら問題はない」との一点張りで、送料等の必要経費は負担するため、商品の受け取りを拒否したい旨のこちら側の提案にも全く応じない状況。

 そこで、とりあえず代金引換の受け取りを拒否しているのだが、今後どのような対応を取ればよいだろうか?
 ちなみに、オークションサイトからの回答は、業者と自己責任において交渉して下さいとのことだった。

 処 理 結 果 及び 解 説

 同じメーカーの商品は他のサイトでも販売されている上、メーカー自体がネット上で直接通信販売にて時計を販売しているようでもあった。しかし、少なくともどのサイトにおいても、26万円で販売されているような事実はないようであった。

 すると、そもそも二重価格表示と言えそうなレベルかと思われるが、そうであれば、オークションサイトも苦情を受けて平然としているのではなく、個別取引の救済は直接出来なくても、出店舗であり繰り返し同様の出品をしている以上、そのような出店業者は早々にサイト上からお引取いただくといった対応を期待したいところである。

 取引に関しては、商品価格自体は1円から入札が可能となっているので、購入価格はある程度自分で決めることが可能であり、また、当該オークションは入札中、他の人がいくらで入札しているのかが外部からは分からないシステムである。

 そのような状況の中で、既に代金引換で発送されている商品の受け取りにおいて、的確な回答をするのがなかなか難しいところなのであるが、ただ、相談者自身で提案しているように、送料等の必要経費を負担すれば、店舗にそれ以上の損害も発生しないとも考えられ、更に受取拒否を続ければ商品はやがて発送元に戻されるものとも思われるので、相談者自身に金銭的被害はない。 

 しかし、既に代金引換で発送されている商品を受取拒否してそのままでいれば、出店舗の性質から見て、今後、相談者はしばらくの間、相当強烈な抗議を受けるのが十分予想ができる。このような相談は、どちらかと言うと、相談者自身がこのような不当な表示を行うような店舗と徹底的に戦う勇気があるのかどうか、その考え方により対応方法が異なってくる。でも、実はこのような性質の相談が多いのがネット取引の特徴でもある。