第七十六話: 損したかどうかは考え方次第

 
相談事例から“今どきの消費者”

第七十六話: 損したかどうかは考え方次第

 相 談 概 要

 当時の画面はもうないのだが、アプリケーションのアカデミック版が35,000円とあったので、購入を検討するため、体験版(無償)をダウンロードして学習した。しかし、いざ注文しようとしたら「アカデミック版」は無いと言われ、通常の90,000円とのことだった。

 安いから勉強して、いざ購入しようとしたら倍の値段というのは、泣き寝入りしかないのだろうか。時間もかけて勉強したり、マニュアルも600ページ以上もダウンロードして出力したりしたのだが。何らかの賠償を求めたい。

 処 理 結 果 及び 解 説

 この相談者の属性は給与生活者とのことであった。
 もともと「アカデミック版」の購入には、一般的に各販売元が定める購入条件や一定の制限が設けられていることが多く、そもそも購入にはそれら購入条件を満たす必要がある。

 ただ、このケースでは、契約そのものが成立しておらず、購入できず残念であったとはいえるが、それ以上の対応を販売元に求めることは難しいように思われる。
 また、販売元が、故意に「アカデミック版」の販売を取りやめたという悪意までは感じられず、マニュアル等の出力も、特に販売元が強制したものではないため、今回相談者がアカデミック版を購入できないことで、何か実害が発生するとも思えないことから、相談内容を見る限りでは、その損害賠償請求も難しいように思われた。

 さて、特に最近は、このような、無駄に過ごした時間を返せ、といった主張をする相談が増えているように感じる。要は何でも自分の基準でものごとを考えるようになっているのだが、このような問題は自分の感じ方次第でいくらでも変わる。

 それより逆に、一般的に販売元が体験版を提供しているのは販促のためと考えれば、通常版で購入をするかどうか今後検討するのは自由であり、購入しなくても、必要な部分のマニュアルが入手できて体験版で無料で学習できたという点で、泣き寝入りではなく、むしろ得をしたと 前向きに考えても良いのではないかということである。