第七十七話: ここまでになるとは

 
相談事例から“今どきの消費者”

第七十七話: ここまでになるとは

 相 談 概 要

 美容師をしている。先日旦那様が芸能人をしているというお客様が来店された。
 話の中でヒントのようなものを沢山出してもらったが答えがわからなく、お客様との間で「次回までに調べてください、答え合わせします」という話になった。
 ネットで検索したら分かるといわれキーワード検索をかけたりしたが分からず、SNSで友人まで公開にして、一部の友人にお客様から頂いたヒントを出して「分かる方教えてください」という形で日記を書いた。

 それを見た友人が情報掲示板に私が書いた内容と同じ内容を書き込みし、偶然お客様本人が、その書き込みを発見して、お店に連絡がきた。「あなたを信用していった事がネットに載っているのは個人情報の漏洩だし、名誉毀損である」と言われ、告訴も持さないとの事だった。
 丁寧に謝罪したところ、情報掲示板の書き込みを削除してもらえれば、この件はそれで終わりでよいと言っていただいた。しかし情報掲示板の書き込みは、他人には削除出来ないどころか、書き込みをした本人ですら、削除出来ない仕組みになっていた。情報掲示板の問い合わせフォームから問い合わせをしたが、規定に該当するか詳細に審査するとの返答だった。

 それから5日ほどたったが、全く状況が変わることもなかったので、何度か情報掲示板に連絡したが、マニュアルどおりのクレーム対応をされ、これ以上連絡を頂いても対応できない旨の連絡が着て、書き込みは未だ削除されていない。
 情報掲示板のガイドラインには、個人情報の漏洩は削除の対象になると明記されているので、個人を特定できる書き込みは削除の対象になるはずだが、削除されない。
 お客様からは「一分一秒でも早い削除をしてほしい、気になって夜も眠れない」と連絡が来ている。 旦那様は近々バンド活動を再開するらしく、このことがバレると活動に支障をきたす、とまで言われている。また旦那様とは離婚調停中らしく、このことが旦那様にバレて告訴されたりしたら、慰謝料等は全て私に請求するといわれ、不安で毎日苦しくて仕方がない。

 処 理 結 果 及び 解 説

 ECネットワークには、掲示板のトラブルもたびたび寄せられるが、いわゆる誹謗中傷のように他人が書き込んだ悪意ある書き込みに関するものよりも、自分で書き込んだ内容を後で後悔して削除したいという要望のものが多い。
 これは相談者が仕事中に「お客様」とのやり取りにてたまたま知り得た情報を、相談者はSNSで友人だけに公開していたつもりであったが、それを見た友人が更に一般の情報掲示板に公開してしまったために本人に知られることとなり、問題となったケースである。

 掲示板の内容を確認したが、その書き込み内容自体に問題性があるとまでは言い切れなかったため、情報掲示板が該当部分の削除に応じなかったとしても責められないものと見受けられた。
 また、その書き込みで、その「お客様」にどのような不利益が発生するのか、また「旦那様」の今後も芸能活動に支障をきたすのか、その因果関係も外見上はなかなか見出しにくかったが、少なくともその書き込みで「お客様」が困る、つまり何らかの権利侵害が行われていると考えるのであれば、先ずはその「お客様」自身より、情報掲示板に対し直接申し出をするという方法もあるかと思われた。

 今後、「お客様」と相談者との関係においては、少なくともこの件で信頼関係は崩壊し、今後は店を利用してもらえないかもしれない。ただ、当時の会話の中で特に口止めされていたわけでもなければ、今後、この「お客様」が慰謝料請求や損害賠償請求を本当にするかどうか、またそれが認められるかどうかもこの時点では分からないため、この点「お客様」の今後の出方を見るしかない。

 特にお客様と長時間接するような職業の場合、その会話の中でいろいろな内容を見聞きすることになるのだと思われるが、そのお客様がある程度特定できるような内容については、少なくともネットでの公開は控えたほうが賢明である。場合によっては店の売り上げに影響が出る恐れもあり、ネット上では、どんな経路で情報が流れていくかは、誰も予測不能なのである。