第八十話: 途中でやめておけば良かったのに

 
相談事例から“今どきの消費者”

第八十話: 途中でやめておけば良かったのに

 相 談 概 要

 福島原発事故関連のあるブログを見たところ、数回にわたりS社の浄水器を買うように強く勧めていた。
 丁度探していたので、どんなものかS社のHPを見たのだが、日本語表記の割に、商品解説などは英文のためわかりにくく、先に購入方法などを確認しようと思ったので、先ずは申込み画面のクレジットカード決済で開くと決済代行する会社名が表示された。そこで、ダミーのカードナンバーを入れたが入らないので、正式なものを入力した。今度は住所が受理されないと表示されたので幾度か試す内に突然受理され、同時にお買い上げ確定となった。返品・交換の明記は、一番下に小さく欄があった。
 商品も不要だし、90000円と高額な支払いもできない。うかつなのは自分だと思うが、どうにか解約に出来ないだろうか。商品は10日後に来る予定。

 処 理 結 果 及び 解 説

 浄水器の販売サイトだが、本社はアメリカ、日本支社がある事業者であった。
 広告には、「世界の軍隊が放射能汚染地域や災害地で常備している浄水器です。NASAが選ぶ世界トップ50のNASAの技術に選択されました」とあった。

 浄水器の通信販売と考えた場合、事業者は返品に関しての特約(条件)を予めサイト上に分かりやすく表記する義務を負うが、ただ、その内容や条件については基本的には事業者側で設定可能である。

 当該サイトには、各ページの下方にリンク先として返品条件があった。

・返品条件
返品・交換 ご注文受領後のキャンセル・返品は不可
ただし配送された商品の破損、不良、数量不足または瑕疵により代替品への交換を希望される場合は、商品到着後2週間以内に限り受付

 この相談者は、単に注文方法を確認しようと安易に思ったのだろう、ただ、ダミーのカード番号や住所では当然だが注文が通らなかったため、本物の情報を入力したところ、そのまま注文として受け付けられたということと見受けられた。
 ただ、少なくとも自分の意思で有効なカード番号を入力し、確認画面まで表示されたとすれば、サイトから見れば正式に申込みをしたものとみなすだろうし、後から「単にテストしてみただけです」は通らないことだろう。
 その場合の契約解除やキャンセルの主張は基本的には相談者の都合によるものと考えられ、その場合、特約内容に従うものと推測される。

 良く、当方でも相談者の手続きを追跡したいと、注文画面まで確認のため開くことは往々にしてあるが、あくまで確認のためのテストであるので、実際に注文完了することはもちろん出来ず、注文する意思が無いのに申し込み完了まですれば、店からしたら嫌がらせにも受取れかねない。紛らわしいことをするのではなく、疑問点があれば事前質問したり商品知識を得て充分検討してから、自らの意思で注文手続きをおこなって欲しいと思う。

 ただ、一方で、いわゆる浄水器が広告で大々的に謳えるほど放射性物質を除去する機能があるのかどうかは、サイトを見る限りでは具体的なデータの表示は一切なく分からない。逆に言えば、浄水器の不純物をろ過するという機能を考えれば、放射性物質だろうとそうでなかろうと不純物ならある程度除去できるとも思われ、これだけ高額な浄水器が日常生活で必要なのかどうか、簡単に判断出来るものではないかもしれない。
 相談者には、購入したとしても、実際にその効果がないと判明した場合は、そのときは契約の解除や取消が可能な場合もあると付け加えた。