8月、ショップサイトからアメリカB社のビーズを60,000円で取引した。
日本での卸元は他に2社ほどあるのだが、個人を相手に日本での卸元にて定番商品でない型番の商品も取り寄せてくれる会社はここしかなく、昨年1度、インターネットで見つけたこのショップから、電子メールにて特別注文として取引を行ったことがある。
そこで今年、また定番商品でない商品を複数特別注文したのだが、その際ショップ側から条件を出され、
1. 300$以上購入 2. 送料、関税負担
というものだった。
私は納得して9月5日に電子メールにて担当者にメール注文した。特記に『10月半ばまでに到着願う』と追伸した。しかし通常ネット通販というもので注文をすると返信で「注文承りました」という内容のメールが来るものだが、返事が無かったので、9月10日に再度「5日に注文のメールは届いているでしょうか?」という内容の確認の為のメールを担当者あてに送信した。
しかし返信が無いので不安になり、9月16日に、今度は直接電話で「注文したのですがメールは届いているでしょうか?」と聞いた所、「メールは届いてますが忙しくて処理できませんでした、送料と関税は負担ですがいいですか?」と言われ、とっくに納得の内容のメールを出していた私は内心不信に思ったのだが、買い物はしたかったので「到着希望の10月半ばに間に合うよう願います」と念を押し、その日にショップ側が注文を受理した形になった。
そして9月25日、旅行に出た私は、ビーズのことに関して早急に連絡が来るといけないと思い、(手に入れたいという願いの強い商品なのである)携帯電話の番号と外出する日程を担当者にメールした。 そうしたら旅先で電話がかかってきて、「特別注文の商品の価格を間違えて『卸売値』で教えていました、こちらの手違いです」と言うのである。
いくらなんでも不誠実や怠慢では無いか、と思ったのだが、何しろそのビーズを個人に少数取り寄せてくれる会社はそこだけなので、穏便に済ませ取引を進めたいと、私は価格の変更など納得した。
ここでショップは「10月半ばには届くようにアメリカのB社に言いました、また、今回こちらでは、仲介のやり取りだけはしますが、入金や発送などはB社と直にやっていただきたいと思います、当社で間違えていた金額については新価格(当然高くなります)がB社から当社に来るので、その後、当社から金額、振込先の銀行をお教えします」と言っていた。
しかしそれからどうやらB社から連絡が無いらしく、10月半ばに届くのか、一体新価格はどのくらいなのかが分からず、さらに送料負担とは言うものの、ショップの怠慢や過失により到着を急ぐあまり、特別な空輸方法を利用されたとしても、それも全て私の負担になるのは納得がいかない。
さらに、ショップから「やっぱり無理でした」とか「B社との取引がうまくいかず中断したい」などとこの先いわれる可能性が考えられるので、損害賠償などを、債務不履行や他の事実などをあげて請求できないものか。また過失や怠慢で嫌な思いをしたのだから送料くらいショップが負担してもいいのではないか。
しかしその商品であるビーズを欲しいと言うのは私の個人的な感情であり、ショップには、もう既にこの件で利益は無く今は通訳をしてもらっている状態なので、なるべく穏便に済ませたいとも思う。
そこで、以下について教えて欲しい。
・ショップには、もうすでに利益は無いが、怠慢、過失に対しての損害賠償として送料をショップに請求できないか。
・そうしたことで一方的にショップから「そんなことを言うならあなたとの取引(今の時点では通訳程度ですが)は解約します」と言われたとき損害賠償はもらえるのか。
・また送料負担どうこうを言う前に、時間的にショップから「B社は10月半ばまでに送ることはできないといわれてしまいました、当社ではどうしようもありません」と言われたら、その場合も損害賠償はもらえるのか。
また、ショップは9月になってそのオンラインショップを閉じたようである。
本件では、相談者とショップとの間で、売買契約が成立しているか、成立しているとしてどのような内容かが問題となる。
売買契約が成立するには、当事者双方の意思の合致が必要となるので、相談者の注文の後、ショップが承諾をした時点で、契約成立となる。この点、本件では、注文したビーズについて、遅くとも9月16日の電話の時点で、ショップとの間で売買契約が成立しているものと思われる。
ただし、価格及び送料については、具体的な数字ではなく、後日B社の提示する金額、という条件で合意が成立したものと考えられるであろう。
やりとりの詳細によっては、これらのことも断言できないのですが、今回はいちおうこのような合意が成立しているとの前提で回答する。
まず、ショップに対して、損害賠償として送料等を請求できないかという点であるが、この場合、10月中旬という納期に遅れないようにするために、余分な費用がかかったとして、その原因が売り主側にある場合には、その分は売り主が負担すべきものとなるから、その額を損害賠償として請求することは可能である。
次に、ビーズを送ることができず、契約の履行ができなかった場合に、契約が解除されたとして、損害賠償請求ができるかどうかについてであるが、この場合、法律的には損害賠償の請求ができるが、そのときの損害は、請求する方が具体的に証明しなければならない。
そして、このような契約に基づく損害賠償が認められるのは、たとえばその商品がなかったために営業ができなかったなどの経済的な損害を、相当程度具体的に証明した場合とされており、契約が履行されないために被った精神的損害などは、ほとんど認められていない。
したがって、相談のケースのように、個人で商品を購入した場合に、契約の解除によって被った損害の賠償を請求することはかなり難しいと思われる。
前回、「法律解釈42」でも、売主側によるキャンセルに対する損害賠償請求を取り上げたが、これら事例を見ると、売主側からキャンセルされると注文者が何を考えるのかが非常に良く分かる。
大体のケースでは、“法律上は可能だが、ほとんど認められない”というところに落ち着くようである。