ガイド詳解3: 代金支払方法について

 
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ガイド詳解3: 代金支払方法について


  インターネット上における注文の流れの中で、代金の支払い時期や方法、また前払式通信販売における通知義務については、特定商取引法の通信販売に該当する場合は、広告規制の表示義務として定めがあります。またクレジットカード決済における分割払いやリボルビング払い、ショッピングクレジットを利用する場合は、その内容により割賦販売法の規制を受けることになります。
従って、どのような決済手段をとるかは、あらかじめ事業者側にて定められていることと思いますが、特にインターネット上での取引においては、今日、多種多様な決済手段が存在することからも、当ガイドラインでもそれらに関わる基準を設けています。

本ガイドラインでの記載内容です。

3-4.代金の支払い時期と方法について
事業者はサイト上に代金の支払い時期や方法を明記しなければならない。これらは消費者にとって購入の意思決定上重要な内容であることに鑑み、事業者は消費者に対し安全且つ信頼できる代金支払方法を提示しなければならない。

・消費者の信頼を得るために、支払方法が選択可能である場合は、その選択肢の中に、代金引換・後払い方式・クレジット決済のいずれかが必ず入っているようにすべきである。
・割賦販売により販売を行う場合は、割賦販売法に定めのある表示事項を表示しなければならない。
・前払い式にて商品引渡し前に代金の全部又は一部を受領することとする場合は、代金受領後遅滞なく申し込みの諾否を申込者に通知するか、又は遅滞なく商品を発送しなければならない。

 ここでは冒頭に記載したように、法律上定められている内容が多いのですが、『消費者の信頼を得るために、支払方法が選択可能である場合は、その選択肢の中に、代金引換・後払い方式・クレジット決済のいずれかが必ず入っているようにすべきである』というくだりがあります。

通信販売では商品引渡しと代金支払いが同時に行われないことも多いため、その場合事業者側では、まずは代金を消費者に先払いさせて入金が確認できたら商品の発送やサービスを提供するのか、それとも先に商品の発送やサービスの提供を行い、後から消費者にその代金を支払わせるか、のどちらを主体にするか、いろいろな方面より検討することと思います。
もちろん、代金先払いであれば事業者側にリスクが低く、また後払いであればそのリスクは事業者側が負うことになります。

先払いであれば、確かに事業者側のリスクは低くなりますが、注文しようとする消費者は、商品購入を検討する際、同じ販売価格であれば後払いのシステムを採っている事業者を選択するであろうことは充分予想できます。
 それはインターネット取引をしようとする消費者が、常に「もしかしたらお金を支払っても送られてこなくて、突然サイトごと無くなっていたりしたらどうしよう」という不安があることによるものと考えられます。
そして、これまで受けてきたインターネット通販の取引におけるトラブルの中で、一番大きな割合を占めるのは「代金を支払ったにも関わらず商品が送られてこない」というものであることが、それを裏付けます。
 後払いは事業者側の資本力の潤沢さをアピールすることにもつながり、消費者の信頼を得ることも出来ます。

 ただ、逆の見方をすれば、後払いシステムのみでいこうと考えると、ある程度、経営状態に余裕がなければ難しい場合もあるかと思います。在庫を抱えるのが難しい、先に入金が無いと商品手配や受注生産が出来ないというケースもあるかもしれません。従って、原則、代金を先払いにしたいと考えるところもあるかと思います。
 先払いのシステム自体を採用するか否かについては、その事業者の事情により判断で構わないと考えますが、先払いシステムだけを採用することでは、消費者の信用を得ることが難しくなると考えます。また、消費者側にだけリスクを背負わせることは好ましい方法ではありません。

 そこで、このガイドラインでは、支払方法に選択肢がある場合は、商品引渡しと同時、若しくは後払いに属するような決済手段を、選択肢に必ずひとつは入れておくよう定めています。
具体的な事例としてクレジット決済が入っているのは、クレジット決済は認証がされた後、信販会社より実際の代金の引き落としがなされるのが、概ね1〜2ヶ月後であること、問題があれば抗弁権が主張できる可能性があることによります。

 さて、特に小さなショップを開いている事業者から、「後払いにて商品を販売したら代金が支払われず、最後に連絡も取れなくなってしまった」というご相談を受けることがとても多くあります。
そういったトラブルが発生した後の事業者の行動で、時々驚くのが、サイト上に「支払いがなされなければ債権回収の組合に依頼します」と記載したり、未払い客の情報をそのまま掲載したりしてしまうことです。

 しかし、これは以前、別の機会があったときに書いたことですが、ほとんどの消費者は善意であり、後払いにおいてもスムーズに取引を行っているのではないかと思われますので、1度や2度、未払いのトラブルが発生したとしても、それを以って全ての取引において、消費者を信用できなくなってしまうことは、さらに事業拡大を図る上でも、マイナスに働くのではないかと考えます。

また、仮に未払いのトラブルが発生したとしても、事業者側では、予めリスクを見込んだ商品価格設定や、税制面からもリスク回避の対処方法が考えられますが、消費者側は、万一商品が届かなかったとしても、個人でそれを救済するのは容易なことではありません。
そして事業者側が未払いの顧客に対し、その支払い催促や司法手続きを行うことは単なる業務内容のひとつになりますが、消費者側はそうではありません。

 支払い方法を検討する場合は、こういったことについても、少し考えられると良いのではないかと考えます。