インターネットのショップサイトを運営する上で、その事業者が取引における一定の条件を定めた利用規約を、予めサイト上に設けているケースがほとんどと思われます。
この利用規約は、そのショップと取引を行おうとする消費者が、サイトを利用する上で否がおうにも従わざるを得ない取り決めであり、実質その利用規約に同意しなければ消費者はそのショップを利用することが出来ないものとなります。
従って、どうしても事業者側に有利な内容が多くなり、消費者側には不利な内容も少なくありません。そのため、消費者契約法など、法律的にも一定の縛りがあり、何でもかんでも事業者側に有利な内容だけを列挙することは出来ないようになっています。
本ガイドラインでは、そういった事業者側が設定する利用規約や免責事項について、一定の基準を定めています。
本ガイドラインでの記載内容です。9.利用規約・免責・責任の明確化
事業者が利用規約等を作成するときは責任の明確化を行い、以下の点に注意しなければならない。
・消費者に一方的に不利になるような免責規定は原則的に無効とする。
・発送事故により商品紛失・汚損・破損が発生した場合は、消費者に対して負担を求めるようなことはしない。
・消費者からの意思に基づかない商品送付を行った場合は、購入意思を確認し、承諾しない場合は速やかに商品を引き取ること。また特定商取引法に従い、一定期間経過後は商品返還請求をしてはならない。
・利用規約はあくまで基準と考え、特に消費者からの苦情処理に関しては利用規約に縛られず、ある程度の柔軟性を持たせること。
・事業者の主体(本社もしくは親会社)が海外にある場合は、当該国で利用している規約をそのまま利用するのではなく、日本国の法令、商習慣に沿った内容となるよう配慮すること。
消費者に一方的に不利になるような免責規定とは、例えば『何があっても責任を負わない』という内容を指します。消費者契約法ではそういった条項は無効と判断される可能性があります。良く例題に挙げられるのは、スポーツクラブなどで「施設内で事故が発生しても当クラブでは一切責任を負いません」というものです。
ネット取引では、特に事業者がオークションで出品する際に、『何があってもノークレームノーリターン』と表示することも、消費者に一方的に不利になるような免責規定に該当すると考えられます。
通販サイトでも、『表示された内容は、一切保証はしません』とか『システムトラブルの責任は一切負いません』といった内容の条項をよく目にします。また、役務提供サイトでも、『いつでも許可無くサービス停止を行うことができます』といった記載があったりします。
個人情報保護やプライバシーポリシーの項には、『第三者には情報提供はしない』といった、立派なことを謳っていても、免責事項には事業者が全く責任を負わない項目が列挙されていたら、本当に信用できるのか考えものです。
消費者側に全く責任が無い事故やトラブルに対しても、事業者側が一切責任を負わないという方向で免責事項を作成することは、避けるべきと思います。
さて、ネット上の取引ですから、商品の引渡しは基本的には商品を指定先に送付する、といった手段を用いるかと思われます。商品の発送手段にはさまざまな形態がありますが、残念ながら、発送中に事故その他により商品が紛失したり、商品が破損してしまったりすることがあります。
実はこの発送中の事故による相談は、残念ながら予想以上に多く、その際に必ず誰が責任を負うかで問題になります。
仮に運送会社にその責任があったとしても、その調査や補償金の支払いには、ある程度の時間がかかります。また、国をまたぐ場合は、なおさら時間がかかります。
でも、その期間、注文を行った消費者はどうすればよいのでしょうか。運送会社に責任があったとしても、それは逆に言えば消費者側に責任はありません。
しかし、発送中に紛失や破損といった事故が発生したときに、事業者側が注文した消費者に対し、「運送会社の責任だから、運送会社から補償してもらって欲しい」とか、「運送会社から補償されたら、新しい商品を送る」といった対応をしているところを良く目にしてきました。
ただ、考えて欲しいのは、注文した消費者には何の落ち度もありません。発送中の事故の責任が運送会社にあったとしても、そのリスクを事業者側が、何より先に回避するという考え方は適してはいないと考えます。
事故があった場合は、その消費者には、まず替わりの商品を発送し、その後事業者が補償を受けるといった流れのほうが、はるかにスムーズではないかと考えます。消費者の満足度も高まり、その対応に信頼をよせることと思われます。
また、先に替わりの商品を送るから、その再発送料をさらに負担するよう、注文した消費者に求める事業者もありました。気持ちは分からないでもありませんが、消費者がその再発送料を負担する必然性が全く見えてきません。
従って、発送事故により商品紛失・汚損・破損が発生した場合は、消費者に対して負担を求めるようなことはしないよう、ガイドラインでは定めています。
(次回に続く)