(前編からの続き)
本ガイドラインでの記載内容です。9.利用規約・免責・責任の明確化
事業者が利用規約等を作成するときは責任の明確化を行い、以下の点に注意しなければならない。
・消費者に一方的に不利になるような免責規定は原則的に無効とする。
・発送事故により商品紛失・汚損・破損が発生した場合は、消費者に対して負担を求めるようなことはしない。
・消費者からの意思に基づかない商品送付を行った場合は、購入意思を確認し、承諾しない場合は速やかに商品を引き取ること。また特定商取引法に従い、一定期間経過後は商品返還請求をしてはならない。
・利用規約はあくまで基準と考え、特に消費者からの苦情処理に関しては利用規約に縛られず、ある程度の柔軟性を持たせること。
・事業者の主体(本社もしくは親会社)が海外にある場合は、当該国で利用している規約をそのまま利用するのではなく、日本国の法令、商習慣に沿った内容となるよう配慮すること。
消費者からの意思に基づかない商品送付とは、例えば第三者が誰か別の名前や住所を「かたって」なりすましの注文をされた、というケースが考えられます。
通信販売の場合、なかなかこれを見抜くことは難しいのですが、最近は注文する際、必ずパスワード設定した会員登録をさせて、一回ログインしないと注文が出来ない流れにしているところも多いことかと思います。それであれば、確かになりすまされて注文されるリスクは減りますが、それで100%なりすましが防げるというわけでもありません。
従って、もし注文された商品を、事業者側では指定どおりに送付したと思っていても、送り先より「全く心当たりがない」と申し出られてきた際には、その商品状態をチェックし、送り先に購入の意思が無いと分かった場合は、速やかに商品を引き取るよう、ガイドラインでは定めています。
また、消費者からの購入の申し込みに基づかないで商品を発送し、その代金を請求することは、特定商取引法のネガティブオプションに該当するケースが想定できることから、その場合は、商品到着後、消費者からの商品引取り要請があった場合は7日、そうでない場合は14日を過ぎると、事業者は商品返還請求権を失うとされているため、ガイドラインにも、その旨の定めがあります。
通信販売は、あくまで消費者からの申し込みに事業者が承諾して成立するものです。
さて、消費者との取引の際にトラブルが発生したとき、その内容が利用規約に定められているからといって、何か何でもその利用規約通りで例外は認めないと言い張り、自ら、その利用規約に呪縛されているような事業者がいます。
確かに、その条項の細かい是非はともかく、予め定められた利用規約に同意の上で消費者は注文を行っているとみなされますので、事業者側においても利用規約にかかれてある内容については拘束されると考えますし、トラブルが発生すれば、当然その記載されている内容により判断するということになります。
ただトラブル内容は、まさにケースバイケースであり、その内容を全て事前に予測できるものではありません。中には、いくら利用規約に定められている内容だからといっても、利用規約のみで縛るにはあまりに忍びないトラブルも発生します。利用規約の型に当てはまらないトラブルも発生します。
そういったトラブルが思いがけず発生してしまった場合は、単に利用規約だけにとらわれず、柔軟な対応が出来るような事業者が望ましい姿といえます。
消費者側の立場になって考えたとき、利用規約通りの解決が望ましくないと考えられる場合は、臨機応変に対応するようガイドラインでは定めています。
外資系の事業者が、日本国内でも新たにサイトを開設してインターネット取引を行おうとする際、予め使用していた利用規約を、ほとんどそのまま和訳して、それをサイトでの利用規約として使っている事業者があります。
しかし、実はその内容が、日本に元来あるような慣習に必ずしも一致していないものがあったりします。日本人が利用するサイトなのですから、当然注文者は取引において、それまで日本で体得してきた慣習で、ものを考えます。
そこに海外の慣習で定められた利用規約をそのままもってくると、トラブルの元になります。
法律的なことは考慮するとしても、一般的な利用規約の内容に関しては、案外海外で使用されていた利用規約のまま、という事業者も多いようです。日本の慣習に合わせた利用規約に作成し直す配慮が必要と考えます。