消費者とトラブルが発生するとしたら、そのトラブルの多くを占めるのは、返品やキャンセルについてではないかと思います。返品に関しては返品特約として、予めサイト上にその条件等について表記していなければなりません。
ただ、その返品に関する内容が微妙だったり、曖昧に書かれていたりすると、トラブルの原因になる可能性があります。今まで返品・キャンセルにかかるトラブル事例を多く目の当たりにしてきたうえで、本ガイドラインでは、返品・キャンセルに関しての規定をはっきりするように定めています。
本ガイドラインでの記載内容です。3-3.返品・キャンセルについて
事業者において返品・キャンセルにかかる特約がある場合は、その受ける期間及び返品に要する費用の条件をサイト上に表示しなければならない。その表示は可能な限り具体的であることが望ましい。
下記についても注意すること。
・返品を受けない場合はその旨を必ず明記し、その理由についても明記すること。
・返品特約についての一切の明記が無い場合は、原則として返品可とみなすこととする。
・商品発送前のキャンセルに関しては可能な限り受けるように努力するべきであり、どうしても困難な場合はその旨サイト上に必ず明記しなければならない。
なお事業者の責により約束が履行されない場合の消費者からのキャンセルに対しては、原則無条件で受けるべきである。
・返品・返金に応じる場合、消費者が先に商品返品後返金するのか、或いは返金後消費者からの返品を受けるのかを予め明記しておくことが望ましい。
・返品手数料及びキャンセル料が発生する場合は予めその旨をサイト上に必ず明記し、その具体的明細を提示して消費者の理解を求めるようにするべきである。
なお実損以上の請求をしてはならない。また消費者に一方的に不利な条件は全て無効とする。
事業者としてみたら、なるべく返品やキャンセル対応をしたくないため、「消費者側の都合による返品はできない」としているところも多く見られます。消費者保護を考えると返品を受けるほうが本当は望ましいのですが、例えば注文を受けてから発注することでコストを下げて安く販売することを一番の売りにしていたり、販売するものが特注品などの場合は、返品を受けられないというケースも想定されます。
でも、そういった止むを得ない事情がある場合は、返品できない旨、表示したときに、併せてその理由をきちんと事前に説明することにより、どうしてそのショップでは返品できないのかについて、消費者の理解を得られやすいのではないかと考えます。
また、消費者は、同じものを販売している複数のショップを比較検討する上で、返品の可否を購入判断基準にすることも多いと思います。消費者に取ってみれば、返品できるショップが良いに決まっていますが、返品できない理由が書かれており、その理由に納得できるものがあれば、たとえ返品できなくても、そのショップを選択することは充分考えられます。
時々、返品特約について、一切の記載が無いショップが有ります。扱っている商品やサービスにおいて、法律上、表示が義務付けられているショップであれば、それを表示しないということは、消費者保護の考えをとり、原則、いつでも返品可能と解釈されます。それがいやであれば、表示をすれば良いだけの話です。
商品発送前に、消費者から注文のキャンセルを申し出られた場合は、実損が出ないようであれば、例え「返品不可」としていても、キャンセルを受けることが望ましいと考えています。例えば在庫商品をそのまま発送するのであれば、商品価値も下がらず、送料も発生していないので、ほとんど実損はないと考えられます。
在庫を抱えず、注文を受けてから商品発注を行う場合でも、キャンセルされたとはいえ、その商品の価値自体は下がってはいないことと思われます。他の客に売れば良いと考えられますので、このケースでもキャンセルを受けるよう努めて欲しいと思います。
ただ、例えば特注品などの場合は、手配後、商品発送の前にキャンセルの申し出がなされれば、ある程度の実損が発生するかもしれません。その場合は、1度注文を受けた後は、例え商品発送前でもキャンセルを受けられない、といったケースも想定できます。
そうであれば、消費者の理解を得るためにも、必ずその理由とともに、サイト上にキャンセルが受けられない旨、詳細を表記すべきと考えます。
また、思いもよらず事業者側により、商品の仕入れが遅れたり調達が間に合わなかったりすることで、注文後、消費者に期日までに商品引渡しが出来なくなる場合があります。
そのとき、消費者が「約束の期日に間に合わないなら注文をキャンセルする」と申し出てきても、「一旦注文を受けたらキャンセルは出来ない」という表示を盾に、消費者側からのキャンセルを一切受けない事業者を何度も見たことがあります。消費者にとってみれば、明らかに理不尽な対応です。
事業者側により約束の期日を一方的に反故にするのですから、そのときには、注文者一人一人に契約続行の意思確認と、そのときに消費者からキャンセルの申し出があれば、無条件で応じるべきと考えます。