<事例>
マーケティング情報の収集のため、関連サイトから資料請求をしておりました。その中の一つに資料請求をしたつもりだったのですが、それは31,500円の有料の資料の申込みでした。
返信メールが届いてすぐ気が付いたので、すぐにメールをして、うっかり申込んでしまったことの事実と購入の意志が無いことを伝えました。送られて来たパスワードでのダウンロードも行っていません。
サイトを良く見ると、確かにわたしは「請求書払い」のボタンをクリックして申し込んでしまっていた様なのです。しかし、内容確認画面も表示されなかったので、返信メールが来るまで有料の資料の申込みとは気がつきませんでした。
その後、先方から請求書が送られて来て、翌日には電話にて以上の説明はしたものの、『「請求書払い」を行ったのはそちらなので・・』と言う事でした。これは支払わなければならないのでしょうか?
注文に対する確認画面はなく、また注文フォームには、最後に以下の記載がありました。
※こちらのお申込フォームの入力を持ちましてご注文とさせていただきます。
※お支払条件は末日締め、翌月末払(現金)でございます。振込手数料はご負担ください。
このケースにおいても、注文時、確認画面がなかったということですが、ただ、このサイトでは、予め注文フォームに「こちらのお申込フォームの入力を持ちましてご注文とさせていただきます」という注意書きがありました。
すると、この注文フォームから注文手続きした消費者は、この注意書きに同意で注文したということになり、確認画面がなくても錯誤無効を主張できないということになるのでしょうか。
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子消費者契約法) 第3条については、(1)をご参照ください。
第3条の但書きには
『ただし、(略)・・・又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合には、この限りで無い』
と書かれています。
この但し書きについて法律の逐条解説では『消費者が自ら当該措置を要しない旨の意思を表明した場合については、当事者の利益関係を考慮し、本条本文の例外として、民法第95条ただし書きを適用する』としています。
さらに続いて『「意思の表明」とは、消費者がその自主的な判断により、自ら積極的に確認措置の提供が必要でないことを事業者に明らかにするとの趣旨であり、消費者が確認措置を要しないと望んでいないにもかかわらず、事業者によってそれに同意するよう強制されたり、意図的に誘導されたりしたような場合は、ここでいう意思の表明には当たらない』となっています。
そこで、このケースの場合、確かに注文フォームには『※こちらのお申込フォームの入力を持ちましてご注文とさせていただきます』といった注意書きがありましたが、これが注文フォームに書かれているだけであれば、少なくともこれで相談者が、確認画面が必要ないと自ら望んで、積極的にその旨を意思表明しているようには見えないと思います。
このケースでは、『消費者が自ら当該措置を要しない旨の意思を表明した場合』には該当しないと思われます。
この条件を満たすような措置としては、例えば、消費者から「確認画面を要しません」という項目に積極的にチェックを入れさせるなどにより、その消費者の意思表示が事業者側により証明が出来るようなシステムでなければならないと考えます。
そうすると、このケースでは、そもそも契約の申込みを行う意思が無かったと相談者が主張することにより、仮に当該契約が成立した後においても、その契約の無効を主張することが可能と考えられます。相談者は未だ代金支払い前ですので、今後事業者に対しては、契約を申込むつもりがなかったとして契約の無効を主張し、支払いには応じられない旨、書面にて通知しておきます。
この後も、電子消費者契約法第3条に関係するトラブルの事例と解説を続けます。