その5: ウェブ上の確認画面について(3-1)

 
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その5: ウェブ上の確認画面について(3-1)

 国際間取引のケースでは?

<事例>

 サイト内のバナー広告に「名刺無料」という広告があり、そのページに飛びました。
 商品を2,000円分ほど注文したところ、「追加注文で無料」という表示につられて、送料が無料になるのかと誤解して追加ボタンを押したところ、それで発注完了になってしまいました。
 サイトの構造上“最終確認ページ”がなく、キャンセルも不可で、バックボタンで戻って注文をし直したところ、重複での注文扱いになってしまいました。

 この会社では日本でのオフィスをサイト上に掲載しておらず、日本語表記ですがアメリカのサイトのようです。サイト内のメールフォームのみがクレームの窓口だったため、すぐさまメールフォームから注文取消しのリクエストを送信しましたが、メール受付の自動メールが返信された以降、なんの連絡もありません。
 自動メールには「すぐに回答します」という文面がありましたが、以降全く連絡がなく、その後2回同じ内容のメールを送りましたが、結果は同様です。

 そのままなんの連絡もないまま、先週商品が重複分を含めて二箱送られてきました。
 カードでの支払いを選択していたので、来月引き落としになりますが、(金額は総額で7,000円ほどです)この会社のECサイトの意図的な不備ともいえる構造にどうしても納得いきません。

 

 この相談のケースでは、いくつかの問題が出てくるため、一つ一つ順を追って解説していきます。

【海外事業者との取引における法律と裁判所の適用について】

 今回相手方の事業者は海外事業者ですので、国を超える取引の際、当事者間において問題が発生した際に、このように、どこの法律を準拠法とするか等、事業者側により規約等により予め定められている場合があります。

 当該サイトを確認すると、利用規約には「適用される法律」として、海外(アメリカ及び英国領バーミューダ)のものが指定されていました。さらに、合意管轄裁判所として、英国領バーミューダの裁判所が指定されていました。
 ちなみに英国領バーミューダは、タックスヘイブン(無税や極めて低い税制にするなど、意図的に税金を優遇して外国の資産を誘致している国や地域)の1つです。

 そうすると、この場合、当該事業者との取引においては、海外の法律が適用され、当事者間の話し合いでトラブルが解決しなかったとしても、海外の裁判所に訴え出る必要が出てきます。そうであれば、初めから当該事業者と争うこと自体が事実上不可能です。
 しかし、それではインターネット等にて海外と取引した日本の消費者が不利益を被りますので、平成19年1月1日から施行された「法の適用に関する通則法」にて、「海外事業者」と取引した「日本の消費者」について、準拠法が海外に定められている場合でも、以下の取り決めがされました。

「法の適用に関する通則法」・・11条1項
(要旨抜粋)
消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、当該消費者契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する

 つまり「海外事業者」と取引した「日本の消費者」は、日本国内の消費者保護関連の法律における強行規定を主張すれば、海外に準拠法が定められていたとしても、日本の法律による消費者保護を受けられるとなりました。

 しかし、日本の消費者保護の法律の強行規定を主張できても、合意管轄裁判所が予め定められている場合は、その裁判所(今回は英国領バーミューダの裁判所)に訴えでなければなりません。
 ただ、管轄裁判所の有効性についても「海外事業者」と取引した「日本の消費者」であれば、日本の裁判所がその有効性を認めず、自国の管轄を認めてくれる可能性は高いと思われます。

 従って、今回、適用される法律と合意管轄裁判所が、予め事業者側により定められていた場合でも、相談者は日本の消費者保護関連の法律の適用を日本の裁判所で主張することは可能と考えられます。

【最終確認画面がないことについて】

 相談者は、「この会社のECサイトの意図的な不備ともいえる構造にどうしても納得いきません」とのことでしたが、日本では特定商取引法により、通信販売の場合、事業者は、申込みの内容を顧客が容易に確認したり訂正できるようにしていない場合、それは顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為として、主務大臣(経済産業省)が、その事業者に対し必要な措置を講じるよう指示することが出来るとされています。
(顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止・・特定商取引に関する法律・・第14条)

 この法律は日本の消費者であれば一般的に適用されますので、改善を求めるのであれば、その指定を受けている日本産業協会の申し出制度を利用する流れになります。
 しかし、相手方は海外ですので、実際申請がされても、日本の省庁機関の執行力が問題となります。現実的には海外の国に対し日本の法律を元に省庁が執行を行うのは、残念ながらかなり難しいことが推測されます。

 そこで、今回間違えて注文してしまったことによる、その有効性に関してですが、日本の法律では、ネット上の取引において、前回より紹介している電子消費者契約法の第3条では、事業者と消費者との取引に限って、こういった確認画面がないケースにおいて、民法第95条の錯誤無効について定めがあります。
 これは強行規定となっています。

 そうすると、上記の説明にもあるように、今回海外取引であっても、相談者は事業者に対し、この電子消費者契約法の第3条の適用を主張することは可能と考えられます。

 しかし、確認画面がないことによる、この錯誤無効の主張が可能なケースには、ウェブ上の確認画面(1)でも説明したように要件があり、確認画面が無ければ何でもかんでも錯誤による契約の無効が主張できるわけではありません。

 詳細はウェブ上の確認画面(1)でも説明していますが、簡単に説明すると、錯誤が「要素の錯誤」であって、
(1)全く申込む意思がなかった場合
(2)申込みの意思表示が自分の意思と異なっていた場合(赤を青として注文、1個のところを10個と注文、などの間違いのケース)が該当します。

 

その6 ウェブ上の確認画面(3-2)「国際間取引のケースでは?」 に続きます。