その12: 特定商取引法(3)

 
知って得するネット取引法入門講座

その12: 特定商取引法(3)

 特商法と個人情報保護法

<事例>

 以前「占星学講座」という情報商材を購入し、60,000円を振り込みましたが、その後売主と連絡が付かなくなってしまいました。
 その後、何回もメールしたのですが連絡が付きません。サイト上には電話番号も、住所も掲載されていないにも関わらず振り込んでしまった私が悪いのですが、なんとかして連絡を取りたいのです。

 逃げられたとも思ったのですが、サイトをみると今月の記載履歴があり、営業活動はしているはずです。そこで、この販売主がディレクトリ登録されていたプロバイダ(ポータルサイト)にも問い合わせたのですが、個人情報保護法の関係で連絡先を教えてもらえませんでした。
 でも、通信販売の広告に関しては、特定商取引法で事業者の氏名及び名称、住所及び電話番号を表示しなければならないと定めていると聞きました。なんとかコンタクト先を知りたいのですが、どうしたらいいでしょうか?

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 「知って得する講座11」でも記載しましたが、事業者の場合、指定商品をネット上で販売する際には、特定商取引法第11条による広告表示義務(事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、いわゆる返品特約 等)が課せられます。
 さらにその場合の「販売業者または役務提供事業者」については、『販売または役務の提供を業として営む者の意味であり、「業として営む」とは、営利の意思をもって、反復継続して取引を行うことをいいます。なお、営利の意思の有無についてはその者の意思にかかわらず客観的に判断されることとなります』とあり、この要件を満たせば個人であっても「事業者」とみなされます。

 

今回、この情報商材を販売する相手は個人ということでしたが、これらによりこの販売主は事業者として扱われ、基本的には特商法上の表示義務を負うものと考えられます。  

 

 一方、この販売主をディレクトリ登録していたポータル側では、サイト登録の際に取得した個人情報を無断で第三者に提供することが出来ない可能性もあります。
 そこで、ポータルが保有する個人事業主の登録情報が、個人情報保護法上の個人情報に該当するのかについては、定義で確認する必要があります。

個人情報保護法 (定義)
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

 すると、相手が個人事業主である場合、ポータルに登録している情報が、あくまで個人の氏名住所電話番号であるとすれば、会社の名称や所在地といった情報とはまた異なり、これは個人情報に該当する可能性が高いと思われます。

 そうするとポータルは、第三者である相談者に、すぐに登録されている販売主の情報を提供することができないことになります。特定商取引法では、個人であっても販売業者の条件に該当すれば表示が義務付けられている情報であるにも関わらず、一方、個人情報保護法上では、販売主の登録情報は個人情報として扱われることになります。

 それでは相談者は、購入時、特商法の表示が無いことについて確認しなかったことを大いなる落ち度として、今回はあきらめるしかないのかどうか、少しだけ検討したいと思います。

 個人情報保護法 (第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
  二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

 例えば今回であれば、相談者の財産の保護のために必要な場合であり、またもともと法律上の義務違反をしている販売主が、その提供に容易に同意するとも思えないことから、この第二十三条の二を適用できないかどうか、ポータルに検討を促してみるということも考えられます。
  ただ、ポータルの立場にしてみれば、相談者に情報提供することにより今後は販売主側からクレームが来ることを恐れ、若しくは面倒くさがって、情報提供に応じる可能性はかなり低いとも思われますので、それなりの覚悟と説得は必要だと思います。