その21: 特定商取引法(9)

 
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その21: 特定商取引法(9)

 商品引渡時期の表示と、カード決済と前払式通信販売との関係

<事例>

 2ヶ月前に、Webショップから55,800円でスーツケースをカード決済にて購入しましたが、通常納期の1.5ヶ月を過ぎても納期確認中のまま、明確な納期は未定なので、キャンセルしようとしました。
 しかし、Webショップは、購入処理後にメールで、商品によっては時間がかかるのでご了承ください、と伝えてあるから、納期遅延は免責と言い張っています。

 私は、納期が2ヶ月以上もかかるとは聞いていないし、せめて遅れても、通常納期1.5ヶ月後に、2週間ほどお待ちください、等の案内があるものと認識しておりました。ショップに何度もメールで納期について問い合わせているのに返信はありませんでした。

 そこで質問ですが、そもそも、海外から商品を取り寄せるにしても、通常納期を過ぎて、入荷の目処もたたず、納期遅延は免責と言えるのでしょうか?
 購入前にもショップには電話しましたが繋がらず、店長の携帯電話にも一度もつながりません。連絡も一方通行で、メールのみです。
 正直ショップに対する信頼はありませんし、詐欺にあっているのではないかと不安です。

・・・・

 事業者が消費者とネット上で今回のような商品を取引する際は通信販売に該当し、法律(特定商取引に関する法律)上、広告規制の表示義務として、定められた事項を表示する義務があります。その中の1つに商品の引渡時期というものがあります。

 第11条1項3号に、「商品の引渡時期もしくは権利の移転時期または役務の提供時期」
とあり、省令9条2号で「商品の引渡時期若しくは権利の移転時期または役務の提供時期は期間又は期限をもって表示すること」とされています。

www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/tokutei/gaiyo/tsuuhan_koukoku.htm#24
『商品の引渡時期とは、消費者からの注文を受けた後に、商品が消費者の元に届く時期をいいます。商品の引渡時期については、期間又は期限をもって表示することが必要です』

 従って、事業者においては、もともと商品引渡時期は具体的に明示する必要があったといえます。
そこでサイト上において、商品引渡し時期について確認すると、以下の記載がありました。
・納期について
海外お取り寄せ商品となります。通常当店入荷までに約1〜1.5ヵ月日数を要します。

 また、相談内容では、
『購入処理後にメールで、商品によっては時間がかかるのでご了承ください、と伝えてあるから、納期遅延は免責と言い張っています』
 とのことでしたが、申し込み後に知らされた内容は、その内容に同意しているとは言えず束縛されないものと思われます。

 したがって、本来であれば納期について事業者は明記するべきところを、それでも当初の約束においては納期に1.5ヶ月かかるということであったにも関わらず、それを過ぎても相談者は商品が引き渡されないとのことであり、相談者も今後、納期も分からないまま、このままいつまでも待つことは出来ないであろうと考えます。
 そうであれば、先ずは事業者側による約束の不履行として、再度期日を定めて商品引渡しの催促を行い、それが出来ない場合は契約を解除するという考え方が出来るかと思われます。実際は決済を行ったクレジットカード会社を巻き込んで交渉する方法が現実的かと思われます。

 また、更に第13条には、消費者が、商品の引渡等を受ける前に代金の全部あるいは一部を支払う場合は、前払式通信販売となり、事業者は消費者に、代金を受け取った後に商品引渡しに時間がかかるときは、その申込みの承諾の有無や、承諾するときは商品の引渡時期(期間または期限を明らかにすることにより行わなければならない)などを記載した書面(ネットの場合は電磁式でも可)を渡す義務を負うとされています。

 そこで、今回は支払いにクレジットカードを利用しています。このような場合、前払式通信販売に該当するのかどうかについては、通達には、

法第13条の趣旨は、前払式通信販売において購入者が商品受領前に代金の全部又は一部を支払ってしまうため不安定な立場におかれることを保護するものである。したがって、クレジットカードが利用される場合においては、本条の「商品引渡に先立って代金の全部又は一部を受領することとする通信販売をする場合において」「その代金の全部又は一部を受領したときは」とあるのは「クレジットカードの利用による立替払いに伴う購入者の銀行口座からの金銭の引落しが商品の引渡前に行われることが明らかな場合において」「クレジット会社が購入者の銀行口座から金銭を引落ししたときは」と解して本条を運用されたい。

 とされています。

 つまり、支払手段にクレジットカードを選択した場合、カード会社により消費者の口座から代金が引かれる前に事業者が商品を引き渡す場合は前払式には該当しませんが、カード会社より消費者の口座から代金が引き落としされた後に商品が引き渡されることが明らかな場合は前払式通信販売に該当するとなります。

 今回であれば、注文決済後、納期に1ヶ月以上かかるのであれば、マンスリークリアによるカード会社からの代金引落しより商品引渡しのほうが後になる可能性が高く、その場合は、カード決済であれ当該取引は前払通信販売にも該当すると考えて良いと思われます。

(参照)
その17: 特定商取引法(6)前払い式と後払い式の違い