その17: 特定商取引法(6)

 
知って得するネット取引法入門講座

その17: 特定商取引法(6)

 前払い式と後払い式の違い

<事例>

 インターネットでインドのホロスコープを見つけ、ウェブ上から申し込みました。
ところが承諾のメールが全くこず、どうなっているのだろうと思っていたところ、いきなり宅配便で占い結果と請求書が10日後に送られてきました。

 そのやり方にとても納得がいかず返品したいと思います。そのサイトには、送料のことも記載されていませんし、キャンセルできるかどうかもかいてありません。請求書を見て、はじめて送料をこちらで負担しないといけないということがわかりました。私がメールで頼んだのは、占い3年分20,000円と翻訳料15,000円です。請求書には送料500円が加算されていました。

 私としては、メールを送った後、何の回答もなかったことから、この会社が申し込みを承諾したとは思っておらず、商品をもって承諾というのはとても納得がいきません。どうか対処方法を教えてください。

・・・・

 サイト上には支払方法に関してはこのような記載がありました。

・支払い方法: 商品到着後、当社指定口座へのお振り込みとなります。
・当センターに申込後2〜3週間でお届けとなります。
・また、翻訳サービスをご希望の場合もう少しお時間を頂く事があります

 この内容を拝見する限りでは、代金後払いシステムで商品(占い結果)が届けられる取引内容と考えられます。

 さて、このような占いに関しても、基本的には特定商取引法の通信販売に該当します。占いに関する事例を下記でも解説しています。
(法律解釈28: 指定役務と前払式通信販売)

 もし今回、代金先払いだった場合には、上記ページにも説明があるように、特定商取引法上、遅滞無くその申し込みに対する承諾の有無を通知しなければなりません。しかし、今回のような代金後払いの場合はその限りではありません。

 一方、商品引渡し時期については表示義務となっていますが、この場合は上記記載により『申込後2〜3週間』と表示されているため、相談者はその条件に合意の上で申し込んでいるものと考えられます。
 ただ、省令9条2号に「商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期は期間又は期限をもって表示すること」とされていますので、今回のサイト上の表現はかなり曖昧と考えられます。

 「申込みの有効期限」があれば、それを記載することも必要です。同様のケースは、下記ページでも説明しています。
(法律解釈29: 時間の経過した承諾通知と申込みの有効期限)

 契約成立時期については特にサイト上に記載はなかったため、実質上、このサイトでは商品発送の時点にて申し込みにおける事業者の承諾の意思表示と考えられます。

 そうすると、基本的にサイトが注文どおりの商品を提供しているのであれば、相談者がウェブ上で申し込み後、サイト側が特に何の連絡もせずいきなり商品を送ってきたとしても、そのやり方が違法であるとは言えず、「納得いかない」という理由だけで契約解除の理由には直接なりえないと考えます。

 一方、このサイトには、送料については記載がありませんでした。
特定商取引法上は、商品代金以外、送料等が別途かかるようであれば、その料金についても表示義務がありますので、サイト上にその記載が必要です。
 その点は事前の同意が無いので、送料負担を求められることについては納得できないと主張することが可能と考えられます。

 さらに、同法の表示義務には、もし取引する商品について、返品に関する条件があれば、その内容を表示する必要があります。
 返品についても、サイト上には何も記載がありませんでしたので、このような法律上の表示義務として返品に関する特約がない場合は、現時点では、「消費者が返品可能と信じていたような場合には、特商法の趣旨を踏まえて返品の要請に応ずるべきものと考える」とされていますが、本年6月に行われた特定商取引法の改正では、インターネット通信販売においては、返品特約の表示がない場合は、8日間、送料消費者負担でその売買契約の申込みの撤回等をすることが出来るとされます。

 これに関しては、下記ページに説明をしています。
(その14: 特定商取引法(4))

 従って、このケースで言えば、必要なければ商品が送られてくる前に「申し込みの撤回」を行う必要があったこと、商品引渡しをもってサイト側からの申込みに対する承諾と考えれば、後払いシステムである以上、特に事前連絡なく商品と請求書を送付するという販売手段が即ち違法とはいえないが、返品特約がサイト上に一切書かれていない以上、それを理由にサイト側は相談者の返品の要望に応じるべきであろうということになります。