(事例)
(1)
依頼人の名前を詩にして額に入れてくれるサイトがあり、祖母の100歳の誕生日プレゼントとして注文することにしました。
しかし、サイト上の注文の選択肢の中で「99歳白寿」までは選べるようになっていましたが、「100歳百寿」がなく、その選択肢欄を選択しないとエラーになり、備考欄もなく、問合わせしたかったのですが、問合わせ先のアドレスがありませんでした。
そこで、注文をした上で「注文承りましたメール」に返信して100歳百寿に訂正してもらえばいいか、と思って、とりあえず99歳でクレジットカード決済で注文し、すぐに「注文承りましたメール」が来たので『99歳までしか選択肢がなかったのですが、100歳の百寿にして下さい』と返信しました。
それについてのサイトからの返信メールがないので、サイトに電話番号は載っていたため電話しましたが誰も出ず、時間とか曜日を変えて何十回とかけても誰も出なく、その後2回メールしたのですが、返信はありませんでした。
しばらくして99歳の名前の詩が届きました。
(2)
ハワイに花を届けるサービスにおいて、オーダーフォームより以下の注文をしました。
商品:¥10000のお花
届け先:ハワイのホテル(結婚式を挙げる友人へのプレゼントとして)
ただ、翌日のホテルのチェックインに間に合えば注文をお願いしたかったので、「チェックインに間に合うよう手配ができますか」の質問をコメント欄に記入し送信しました。
支払い方法を「金融機関振込み」を選択しておきました。
オーダーフォームには、送信後に注文の確認メールを送る旨の記載があったのに、確認のメールは届きませんでした。ただ、料金も入金していないし、直前の手配で間に合わないということで受付は完了されていないということだと思い、違う会社にて花を手配しました。
しかし、翌日に携帯電話に何度かこの会社から電話がありました。留守電に「折り返し連絡をください」とメッセージが残されておりましたが、その日は多忙につき折り返すことができずそのままにしておりました。土日をはさみ、月曜日にメールをチェックしたところ、この会社から「希望の現地時間には手配ができませんでしたので、翌日に手配をし、配達完了です。料金を3日以内に振り込んでください」とのメールが届いていました。
しかし、こちら側としては、未入金、および確認メールが届かない状況で受付が完了されていたとも全く思いませんでしたし、また、希望日が無理であれば、その旨を確認してから手配するのが当然だと思っています。
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(1)のケースは、事業者のサイト上では、【売買成立時期】として、『代金決済時(代金決済後のキャンセルはお受けできません) 』と記載されていました。
サイト上では百寿へのサービスがもともと提供されていなかったとのことですので、白寿で注文を行いカード決済がなされた時点にて、外見上、その申込み内容での契約が成立することになります。
その後、返信メールにて、その申込み内容の変更を事業者側に申し出る場合は、その変更に関して事業者側の承諾が必要になります。
このケースでは、残念ながら百寿への変更に関して事業者側からの承諾の意思表示は確認できませんでしたが、ただ一方で、事業者においては、事前に問合せする手段も無く、また申し込みフォームには備考欄も無いとのことだったため、相談者が行った一連の行動も多少は理解出来ます。
また自動返信メールが届いた後、すぐにメールで事情を連絡しているので、事業者側においても商品引渡し前に、少なくともその事情を認識できていた可能性もあり、プロの事業者として、商品発送前に注文者への確認を行うなど、何らかの対応も出来たのではないかとも思われます。
(2)のケースもよくあるケースで、疑問点があれば注文前に質問するべきところを、注文と同時に質問を行い、その質問を自ら契約内容の一部にしてしまうようなケースです。
もともと、サイト上では手配は翌々日からとなっていました。そこを、相談者は翌日に必要ということで注文しています。
このケース、事業者のサイト上で指定された方法で、注文の申し込みを行っているので、それに事業者が承諾すれば基本的に契約は成立するものと考えられます。相談者は、注文後、事業者からのメールが届かなかったこと、及び先払いにおける入金もしていないので受付は完了されていないと思ったとのことでしたが、ただメールが届かなかったとしても、その時点では契約の申し込み自体は未だ有効であり、契約が成立すれば、その拘束を免れることはできなくなってしまいます。契約の成立を意欲しないのであれば、契約成立前に少なくとも申し込みの撤回(キャンセルの意思表示)が必要であったでしょう。
また、サイト上では手配は翌々日からとなっている販売条件のところを、翌日に必要ということで注文しており、発送前に、緊急で事業者からは確認電話連絡が本人にあったようなので、それを放置していたことも、相談者に落ち度があるともいえます。
ただ、このように、本来であれば事前に質問して確認すれば良いような内容を、注文と同時に事業者に知らせ、それを契約内容の一部として主張してくるケースがあります。
注文フォームから届いた注文に、そのような質問や条件が記載されていることに気付いた場合は、事業者側で一時注文を保留にして改めて確認するというひと手間が必要になってきます。申出に承諾できないならもちろんですが、承諾できるとしても、承諾の旨を別途注文者に通知しておくことが望ましく親切であるといえます。