第七十七話: こっそりと輸入禁止品

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第七十七話: こっそりと輸入禁止品

 相 談 内 容

 オークション代行会社を使い海外より、約31万円でギターを落札。入札時には「輸入禁止と判断された場合には、日本への発送はできない」と表示されていた。ただ、落札したのはギターであるため、まさか輸入禁止になるとは思っていなかった。でも輸入禁止であるのであれば、直接代行会社のあるアメリカまで取りにいくので渡してほしいと交渉したが、「直接事務所に行っても渡さない」と返事が来た。直接出向いても商品を渡さないのは納得ができないと申し出たが、話し合いに応じる気はない様子。

 決済を行ったカード会社にも相談し「商品を受領していないので、決済はしないでほしい」と伝えたが、「うちは関係ないので、お互いでなんとかして下さい」との返答であった。
 代行会社に支払済みの代金返金を請求したいが、どうすればよいだろうか。

 処 理 概 要 及び 解 説

 当該サイトは、海外オークションの代行であり、そのシステムは「ためになる 第六十三話:海外オークション代行サイトの瑕疵担保責任」を参照してほしい。

 今年秋頃より、当該代行業者において事例とほぼ同様の相談がいくつか寄せられている。
当該サイトの輸入禁止品については以下の定めがある。

1 ワシントン条約
2 著作権 違法コピーなどの海賊版
3 危険品
4 日本での規制、禁制品に該当
5 他法令に抵触するもの(薬事、食検、銃刀法など)

1 ワシントン条約

この場合、商品がワシントン条約に該当していないという証明がない限り、疑わしい商品はお送りできないという判断がされます。
例えば、Rosewoodを使った楽器(特にギター)です。出品者の商品ページにRosewoodの記載がある場合など、どの種類のRosewoodなのか明記されていないため発送できないケースがあります。
そのため、Rosewoodなどの輸入が禁止・規制されている商品に関しましてはお届けすることができませんので、ご入札はお控えください。

 実は、当該サイト上では、9月より、お知らせとして以下の記載がなされている。

・輸入禁止品の入札はお控えください
商品ページの上部に輸入禁止ワードの警告が表示された商品は、入札をお控え願います。落札された場合でも検品の結果「輸入禁止」と当社が判断した場合は、日本への発送はできません。
その際、手数料を含め1次決済額のご返金はいたしかねますので十分ご注意ください。ご協力お願いいたします。

 この相談者のギターも、Rosewoodで出来ているものだったが、Rosewoodは、実はワシントン条約により輸入規制がかかっており、輸入禁止品に該当する。
 しかし、それら記載が分かりにくく、まして手数料を含め1次決済額が返金されない旨は、上記お知らせのページにしかない。お知らせページは、次々新着情報が上位に載せられていくため、だんだん見つけにくくなる。

 このように、Rosewoodのギターを落札した当該サイトのユーザが、落札したものは当該サイトの輸入禁止品に該当するものとして、商品代金を支払ったにもかかわらず、商品が受け取れない、しかも返金もなされないというトラブルが、最近になって何件も発生している。
特に、Rosewoodのギターは、別の相談によると日本でも希少品であるとのことだが、日本でも販売自体はされているので、特に輸入禁止品として気には留めなかったという主張である。

 輸入禁止品とされている商品を落札したという相談者の落ち度はもちろんあるが、ただ、そのような商品でも落札できてしまうシステムも問題ありと思われ、何より商品が引き渡せないのであれば、それまでの手数料は差し引かれるとしても、基本的にユーザから商品代金を得る理由は無いことになるのであるから、その差額は返還する必要はあると思われ、少なくとも海外オークション出品者から商品を得て、尚且つ商品代金も得たままというのは不当と思われる。

 

参照
ためになる 第十一話:『紙』よこせ!
・ワシントン条約(CITES)
meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/cites/index.html
・税関
customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/9008_jr.htm