第二十六話: 定期行為:あっせん編

 
相談事例から“今どきの消費者”

第二十六話: 定期行為:あっせん編

 相 談 内 容

 あさって(5日)開催されるセール招待状(送料込)を、3日朝にオークション即決で2,800円にて落札し、すぐメールで連絡した。出品者からもすぐ連絡があったので、前日(4日)に届くように伝えた。出品者からは、オークション終了日の午前中にはがきを広島から速達で発送したとのメールがあった。

しかし4日には届かなかったので、そのことを出品者に連絡したところ、速達ではなく、普通郵便(郵便書簡:ミニレター)で大手町から発送したとのことであった。結局、開催日当日の午後2時ごろに届き、招待状は意味のないものになったので、出品者には返金を要求したが、返金には応じないとのことである。
こういった場合は返金の要求というのはできないものなのだろうか。出品者はまったく耳を貸さないといった状態である。

 処 理 概 要

 この相談を読む限り、当該商品が(5日)にしか利用価値の無いものであれば、当日の午後2時に到着しても既に価値は無いものであるという考え方が出来ること、また、出品者は前日である4日に相談者の手元に到着させる方法を取ることが可能であったにも関わらず、それをしなかったものと考えられたので、定期行為として契約を解除して返金を求めることは可能かと思われた。
 ただ、詳細が分からなかったので、出品者とのやり取りのメール内容を知らせることと、あっせんを希望するかどうかを相談者に改めてたずねることにした。
 相談者からやり取りのメールが届いた。経緯はおおよそ以下の通りだった。

・3日 9時ごろ 出品者より、落札の知らせと代金支払い連絡、配達記録郵便の受取の可否を至急連絡するよう聞かれる。
・4日 8時ごろ 出品者より、前日に妹のところの広島から速達で発送したこと、本日届く予定であることが知らされる。
・4日 20時ごろ この時点で相談者のところに届かないことを知らせると、相談者が郵便局に確認するよういわれる。
・4日 22時ごろ 出品者より、勘違いにより広島からではなく、大手町から手渡しのミニレターで送った旨知らされる。また郵便は配達記録等つけていないこと、午前中だったので、配達員に確認したところ、何も無ければ翌日に着くという返事をもらっていたと言われる。
・5日14時ごろ 相談者にハガキが届く。
・5日 20時ごろ 出品者より、配達記録は在宅で無いと受け取れないので今回はやめていたこと、速達等で送るようしては無かったので、翌日届かなかったのは郵便局のミスではないかということ、実際はもう手元に届いているので、間に合わなかったのは申し訳ないが、100%非があるとは思えないということを言われる。

 そこで、相談者が出品者とのあっせんを希望し、既に出品者側よりあっせんについての承諾を得ているとのことだったので、こちらから出品者に連絡を取った。

 出品者から返信があり、確かに3日の朝に即決し確実に届けるよう記載したが、具体的な発送方法はオークション時には定めておらず、「配達記録は受け取れるか」という質問にも、相談者からは「窓口で確認して欲しい」といった意味不明な返答だったため、午前中に発送しなくては、という意識のもと、そこにいた郵便局員に投函を依頼したということであった。また「翌日とどくか」という質問にも郵便局員からは「届く」という返事をもらっていたので、それが届かなかっただけのことである、という主張であった。

 そして、出品者はこちらの見解が聞きたい、ということであったので、確かに郵便物が本来届くべき時に届かなかった、ということにはなるが、今回の商品は利用できる日時が特定されており、その日時前に到着しないと意味を成さない性質の商品であったと考えられるため、そうであれば、今回送料負担するとはいえ、何より4日までに相談者の手元に到着可能な方法を検討することが必要だったかもしれないと伝えた。しかし、それまでのやり取りにおいては、相談者側にも一部不備があったことも事実であり、細かい部分で双方譲歩が可能であれば、そこはこれから検討したいと伝えた。

 そうしたやり取りをしたところ、出品者からは「商品(ハガキ)を返送すれば返金する、もう期日が過ぎた意味の無いものかもしれないが、あくまで商品は商品である」という返答があった。
 相談者に伝えたところ、「返金額は落札金額(2,800円)と、返送は出品者と同じ郵送手段を考えているので、その費用(60円)、合計2,860円でお願いしたい、先に返金して欲しい」とのことであった。
しかし、それを出品者に伝えたところ、「こちらが一方的に悪いように解釈されている、送料を支払う意思はないし、送金手数料130円を引いた、2,670円で返金する、商品が到着後に返金する、返送方法がミニレターとするならば、万一紛失して届かなかった場合は返金しない」という返答であった。そこで出品者には、再度、例えば送金手数料、若しくは返送にかかる郵便費用のどちらか一方の負担は可能かどうかを聞いてみたが、これ以上の対応は出来ないとのことであった。

 相談者に伝えて、相談者側で譲歩できる部分があるかどうかを聞いたところ「送金手数料130円を引いた2,670円の返金で良い、商品も先に送るので確実に返金して欲しい」とのことであった。
 そこで、出品者にその旨伝え、相談者よりハガキを返送した。しかし、返送後7日経過しても返金されていないとの報告を受け、再度出品者に連絡を取った。その2日後、出品者から連絡があり「不在だったので、未だ返金手続きをしていない、研修中なので翌週に返金する」との返答があった。
 その7日後、相談者から返金が確認できたとの報告があった。

 解 説

 セール招待状が、開催日当日午後に届いたために起こったトラブルである。このような場合の契約に関しては、「定期行為」として、直ちに契約を解除することが出来ると考えられる。
定期行為の法的解釈については、「法律解釈と実務」下記ページに事例とともに記載しているので参照して欲しいと思う。

定期行為:法律解釈編

 時間軸から考えると、今回の取引は落札された後、ほぼ36時間内にすべて完了させる必要があった。落札日においては相談者側に多少の連絡の不備があったようであるが、出品者側も「送料負担」で出品していたからといっても、60円のミニレターで送るとはあまりにお粗末である。セール前日、つまり落札翌日には確実に相談者に届ける必要があったことは、出品者は十分認識できていたはずである。4日 22時に知らされた出品者側の「勘違い」が本当だったかどうかは分からないが、少なくても他の取引と間違えているようでは話にならない。

 このあっせんでは、当事者双方とこちら側において、かなりのやり取りが必要になった。合意点を見出すにも時間がかかったが、合意後も出品者側の返金にさらに時間がかかったからである。取引は即行、トラブル解決は鈍行であった。