第四十一話: 出品者の悲劇(1)

 
相談事例から“今どきの消費者”

第四十一話: 出品者の悲劇(1)

 相 談 内 容

 (1)
 オークションを通じて販売した相手から、商品が違うと因縁をつけられ、色々と脅されている。返金に応じるといっているのだが話が進まない。とにかく怖くて仕方がない。

(2)
 インターネットオークションに商品を出品して落札された。それから一週間が経過したが未だに落札者から連絡がなく、結局、次点候補者に譲る形となった。

 最高入札者落札金額 900円
 次点候補者入札額 350円

 この最高落札者の取引履歴を確認したところ、連絡がなかった期間に別の取引相手とのやり取りが記録されていた。つまり仕事の出張や病気など理由により全くPCを閲覧できなかったという事ではないらしい。
 しかも私がこの評価欄から書き込みをした後にIDを削除しており、また未だに一切連絡がないというのを見ても、この落札は明らかに悪質ないたずら行為であったと思う。

 私の要望は、被害金額も少ないので落札者の方と直接連絡し、示談で解決したいと思っている。しかし一度もメールの返信が来ないので、落札者の個人情報がわからない。オークションサイトは公的機関(警察・裁判所)からの要請がない限り、個人情報を個々にお知らせできないと言っており、こちらからは落札者から返信メールがない限り交渉できない状態である。

 また、どうも落札者と次点候補者は、同一人物、若しくはグルではないかと思う。それにより安価に商品を手に入れようと仕掛けてきていたのではないかとも思う。今後の進め方、解決の仕方、本件の見解など色々踏まえた回答が欲しい。

(3)
 インターネットオークションに初めて出品した。パソコンを出品し、オークションの規約等に沿って出品したにもかかわらず、20万円で落札直後、IDが停止処分になった。
 落札者とは連絡のとりようもなく、オークションサイトにメールを送ってもパトロールが疑わしいと判断したということである。何が疑わしいのかなど、こちらが納得出来る説明は全く無く、結局取引は成立しなかった。しかし、クレジットカードには、オークションサイトから手数料¥11,550の請求が来る。出品商品の説明も画像も偽りは全く無く、なのに一方的で、しかもこちらからの質問への回答もテンプレートメール。この手数料は納得できない。

 処 理 概 要

 (1)
 基本的に送った商品がオークション説明と異なっていた場合は、原状回復して、相手方から商品を返送してもらい、貰った代金をそのまま返還すれば充分と考えられること、どのように脅されているのかは分からなかったが、やり取りにおいて恐怖を感じるようであれば、商品を返送すれば代金を返還する旨を書面で伝え、それ以上積極的にコンタクトを取らないようにして様子をみてみるよう伝えた。

(2)
 いたずら入札がなされたとのことだったが、経緯を見ると、既に次点候補者を繰上げ落札者にして取引しているのであれば、外見上、取引に関しては特に何も問題なく終了しているように思われた。
もし低額にて落札されることが嫌であれば、落札されても納得できる最低価格を開始価格として最初に設定しておけば防げる話だと考えられる上、またオークション上、出品者側に発生するシステム手数料は最終落札価格に準じた請求になろう事かと思われ、また、次点候補者を繰り上げなければ手数料は発生しないものと思われた。
 また、オークション上ではキャンセルすれば評価が下がる等のペナルティを受けることになり、IDを削除すれば今後オークションに参加することが出来なくなる。

 今回、相談者の意思により次点候補者を繰り上げて取引自体は成立し、次点候補者から代金を得ることになるので、この入札者に対し、本来であれば得られたであろう金銭を請求することはなかなか困難と思われること、また、今回の件は、相談者から商品や代金を騙し取ろうとしているケースでもないと思われ、オークションサイトではそのためにID所有者の個人情報を第三者に開示することも原則的には出来ないものと思われた。

 そして、落札者と次点者が同一人物、またはグルであることを相談者側で立証することは極めて困難であり、残念だが現時点で相談者が示談に向けた交渉をするのは困難であるということを伝えた。

(3)
 オークション上で出品していた商品に関して出品取消をされ、それに伴い、オークションIDも停止措置を受けている状況と思われた。ただ、実際の出品されていた画面が確認できなかったので、本当にこの相談者が違反行為をしていないという確証も無かった。

 ただ、オークション事業者側が、各オークションの出品取消しやID削除の権利を有すること、またそれら規約違反に伴う利用料、手数料等の負担に関しては、利用規約やガイドライン、ヘルプページ等に記載があり、当該事業者の提供するサービスを利用する際は、この内容に原則同意の上、利用申込みをしているものと伝えた。

 しかし、この内容全てに正当性があるとは限らず、相談者に本当に違反行為がないまま、全く身に覚えのない利用停止措置により、さらに落札に伴うシステム利用料の請求がなされるのであれば、それら対応にはかなり疑問が残った。

 ただ、オークションサイトが一旦こういった措置を行った場合、残念ながらそれを撤回させるには、かなり粘り強い交渉が必要と考えられるので先ずは文書による交渉を行い、それとともに、クレジットカード会社にも連絡し、事情を説明して解決するまで請求を待って欲しい旨やオークションサイトに対し調査をするよう依頼してみるよう伝えた。

 

※ いまどきの消費者 第四十二話「出品者の悲劇(2)」に続く