<事例>
ブランドバッグ「マロン」を93,450円で購入しましたが、商品が思っていたものではありませんでした。
サイトには「マロン」と表記されていましたが、実物の色は「キャラメル/ショコラ(ブラウン)」でした。しかしサイト上の画像は、明らかに実物キャラメル/ショコラ(ブラウン)とは違っていました。
一方、他店のサイトをみると「ブラウン」や「キャラメル/ショコラ」と称して販売しており、明らかに「茶色」で画像色とも一致しています。私はブラウンとは違うマロンという色があると思い、この商品を購入しました。ブラウンなら購入しませんでした。
以上の理由で今回購入した商品の返品を申し出ましたが、返品・交換・キャンセル不可で買取での対応なら可能とのことです。(70%なので89,000円×70%=62,300円→63,000円)要するに私が30,450円負担して商品を返すということになります。
そこで相談は、色については消費者契約法の「誤認」にあたると思うのですがいかがでしょうか。「誤認」にあたれば契約を取り消すことができると思いますが、その場合どのような手続きをとれば宜しいでしょうか。
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消費者契約法
第四条
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認。
(第二号 略)
(第二項、第三項、略)
4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件
今回の相談者は、ブランドバッグの色が、サイト上に「マロン」と表記されていたにもかかわらず、実物の色は「キャラメル/ショコラ(ブラウン)」だったことに対し、重要事項について事実と異なることを告げられたため誤認したということで、契約の取り消しを事業者側に求めることができるかというものです。
そこで、誤認による契約の取消しに関してですが、第四条では、『消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し〜』とされています。
ネット上の広告を見て商品を申込む場合、基本的には通信販売となり、広告は申込みの誘引と考えた場合に、その取引は広告を見た消費者側から能動的に申込みを行い、事業者側がその申込みに承諾する流れが一般的と考えられます。
その場合、逆に見ると事業者側からの積極的な勧誘はなく、通信販売一般においては、『消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し〜』の上記消費者契約法の取り消しの条項にそのまま該当しない可能性が出てきます。
そもそも消費者契約法は、強引な訪問販売や電話勧誘販売で自らの意に反して結んだ契約や、マルチや金融商品取引のように、事業者が勧誘時、儲かることだけを強調し都合の悪いことはすべて隠して結ばせた契約に対し、消費者が取り消しできると認めたものでもあると考えられます。
通信販売では、事業者側からの強引な勧誘があるようなケースがあまり考えにくく、消費者契約法の取り消しにおいては、認められにくいように思えます。また、単に「説明がなかった」というケースに該当するものでもありません。
ただ、通信販売においても、消費者の権利を不当に害する条項がある場合は、消費者契約法第八条から第十条により、その条項は無効となります。
参考 法律解釈11: 確認画面と錯誤無効・消費者契約法(後編)
この相談のケースでは、消費者契約法による取り消しがそのまま使えるとは限らなかったため、そもそも事業者側の責任において返品に応じるべきケースなのかの判断が別途必要になってくると思われます。
ただ、画面上の色の感じ方については、基本的には人それぞれであり、ある程度の主観を伴います。また、今回のケースは「マロン」と「キャラメル/ショコラ」といった色の名称の問題とも考えられます。
同様のトラブルについての考え方は、以下のご参照ください。
参考 今どきの消費者 第五十四話: わたしの決めた色が絶対正しい